この初夏、久しぶりに恋心と再会した。約1年半ぶりの感情が胸に戻ってきて、彼と同じくらいこの感情が愛おしい。
恋愛の醍醐味の一つは、物事の矛盾を体験できることだと思っている。強く噛まれるよりも、甘噛みされる方がいつまでも跡に残ること。引っ掻かれるよりも、なぞられる方が深く疼くこと。そしてこの場合の優しさは、優しい使い方をされていない。それを分かった上で相手をより覗き込もうとするのが恋心。まさしく人間の不可解性を感じる。

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ただ、ブランク期間があったからか、前回胸に抱えていた時と全く同じとは言えない差を感じている。
今までの私のときめきは、抗えない男性性の強さに反応していた。つまりセクシーな仕草や言葉が大好物。自分とはまるで違う首筋から香る匂いを求めて鼻を埋めると、心が、とくんと動くのをよく感じた。今でもこの異性の独特な香りは好きなのだが、今はそれ以上に彼の可愛らしさに胸がときめく。
先日、彼がスポーツ観戦をしていた時のエピソード。試合が終わった後も熱が冷めなかったから、その勢いで仕事関係のことをがむしゃらにやっているのだと連絡がきた。
そのテキストを見て、私は画面に向かって「可愛い人……」そう呟いた。つい、教員をしていた時に見た光景にリンクしたのだ。

体育祭で大抵は最終種目であるクラス対抗リレー。40人近くいるクラスから選ばれる代表男女8人が、最後の得点を競って走る種目である。1番盛り上がることは確かだが、あまりに盛り上がり過ぎると教員として気になるのは客席の様子。決して自分が走っている訳ではないのに、応援に熱が入りすぎて奇想天外な行動をとる子が出てくるからだ。
ある時、あまりに自分のクラスが1位になったことが嬉しかったのか、そのままグラウンドまで入ってきてでんぐり返しをする男の子がいた。満面の笑みで、何とかその気持ちを表現したくてやったのがでんぐり返し……。あまりの可愛らしさに愛しさが込み上げてくるシーンだったが、それを彼にも感じた。
今までは自分が持っていない雄らしさに惹かれていたのに、今は女子も得意とする可愛らしさにより惹かれる。こんな風に変化するものだとは思わなかった。

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ポルノグラフィティの歌で、「心」の性感帯を表現した曲がある。個人的にこれは恋心を最もセクシーな言葉に変えたものだと思っている。
反応する箇所は十人十色で、決してマニュアル通りでも、誰に対してもときめくとはいかない。しかし、相手を深く知っていこうと色々なことを試す/試されることで、ついには脊髄反応してしまう癖を発見する。
その癖は自分にとっては意外かもしれないし、時とともに変化するものかもしれない。終いには、どんな些細なことでも反応してうざったくすら感じたりもする。
それでもはっきり言えるのは、私たちはこの刺激を通して人間の不完全性を美しいと思えるようになるのだということ。この久しぶりの再会で、私はより微笑んでしまうような泣きたくなるような矛盾にまた出会わせてもらえる。
恋心、おかえり。