6歳の時、好きな男の子ができた。かっこよくて優しくて、一緒にいたいと思った。でも、その時は“恋”という意識は、まだ芽生えていなかった。ただかっこよくていいな、優しくて好きだな、といった簡単な気持ち。

その後も、かっこいい人や、趣味の合う人などと仲良くなったり、お付き合いさせていただいたりした。でも、それは一緒にいて楽しい、話せて嬉しいなどの軽い気持ちで、“恋”という感覚ではなかったように思う。

19歳の時に恋をした彼はだらしなかったけど、なぜかとても惹かれた

私が初めて“恋”をしたのは、19歳のときだった。その人は正直、とてもだらしなかった。相手は10代の私に対して一回り年上の30代の人。ギャンブルやタバコにハマり、常に金欠。ときには学生の私のバイト代を借りることもあった。

でも、私はなぜかその人にすごく惹かれた。その人のことを考えると、胸がいっぱいになった。その人が「わ~か」と呼ぶと、自分の名前がキラキラしたものに思えた。その人が「バカっ!」と言うと、とても悲しかった。

その人の言葉はどれも他の人が発する言葉より重く、その人の言葉だからひどく傷つき、また、心に響いた。この人と結婚したらどうなるだろうと考えることも多く、悩んだりときめいたりを繰り返した。

でも、社会人になったときに別れを告げた。彼とは価値観が大きく違った。金遣いの荒さに困ったり、年齢の違いで話題も噛み合わなかったりとすれ違ってきた。何度も暴言を吐かれて、ひどく傷ついた。これから一緒にやっていける自信がなくなった。

けれど、嫌いになったわけではない。互いの将来のため、自分の道を切り開くために別れた。彼もおそらく納得していたと思う。

恋心を抱いた彼と別れ、新たな彼は一緒にいて楽しいけど恋ではない

別れた後、彼は会社を立ち上げた。私も仕事につき、いろんな挑戦をするようになった。そして、新しい出会いを経て、今の彼と付き合うようになった。

考えてみれば今の彼に、恋心を抱いた感じはない。結婚を考えている相手ではあるが、恋人というより、初めから友だちのような、夫婦のような感覚だった。一緒にいて楽しい。一緒にいて苦にならない。一緒にいて気楽。

彼はおおらかな人でそういうところが魅力的だが、一方でときめかない。彼の言葉はどこか適当で響いたことはあまりなく、なんとなく過ぎていく時間。きっと結婚したらこのまったり感が心地よく、過ごしやすく長続きするようにも思うが、恋は始まっていなかったのだと思う。

恋が始まらない理由は、初めから恋心ではなかったからだ。恋というのは、やはり特別。考えるものではなく感じるもの。

恋が始まらなくても、恋ではなかったとしても、それはそれでいい

だらしなかったけど、私が恋だと感じたのは前の彼だけ。自分でも、もっとしっかりして、かっこよくてできる人に恋心を抱きたかったと思う。

でも、実際はだらしなくて、暴言を吐く彼になぜかときめいた。不思議だけど、これが事実。自分の心に嘘はつけない。だらしなくて暴言を吐く彼に、私は恋した。そして、その恋は散った。恋は始まったから終わってしまった。

今の彼は、恋した彼ではない。でも、私は彼が好き。それで今は充分。恋が始まらなくても、恋ではなかったとしても、それはそれでいいんじゃないかと思う。

恋が実ることが成功ではない。恋が始まったら、いつか終わりがある。だから、私は恋が始まらなかった今の彼と、ずーっとずっと続く気がする。始まりがなければ、終わりもない。彼とのこれからは、永遠に続くものだと考えた。恋をやめたが、私は自分の選択に後悔していない。

でも、たまに前の彼のことを考えてしまう。ときめいた恋をした元彼。後にも先にも……恋した相手は、きっと彼だけ。