2019年、ハイヒール規定の廃止を求めて、#KuTooというハッシュタグが拡散された。
女性社員が多く在籍する企業では、華やかさの象徴のためにハイヒール規定を設けているところも少なくない。携帯電話の販売会社や航空会社等、それは多くの企業に浸透している。
思えば私も10年以上前、大学入学に合わせてスーツを購入し、そのプレゼントとしてヒールの高いスーツ用の靴を戴いた。その靴は私に合わず、大学入学式で穿いたその日のうちにデパートで歩きやすい靴を購入し、同時に捨てた。
母によると、入学式では私以外にも慣れないハイヒールを歩きづらそうに穿いていた学生が多くいたという。
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私は昔からよくネットで外反母趾、内反小趾、扁平足と検索していた。理由は簡単。私自身が当事者だからである。
小学生だった20年ほど前にテレビでたまたま内反小趾を知り、私もそれに該当することが分かった。特別な痛みはなく、生活にも支障がないことから長年放置していたが、調べてみるとそれは扁平足や外反母趾との併発事例が多いという。そして残念なことに私はその全てを持っていることが分かった。
これらの疾患は女性に多く、理由はハイヒールをよく穿くことによる足指の変形だという。私はそういった靴を穿いて来なかったが、生まれ持った扁平足により後の二つの疾患が併発した。
病気のこともあって昔からハイヒールに関心がなく、お店のものを遊び半分で穿いてみるとそれはもう足に合わず、自分の穿くものではないと思った。世の中の女性は歩きづらさや痛さを取ってまでも見た目を尊重するかと、生きる世界の違いを感じた。
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大学生になりお洒落の幅が広がると、周囲にハイヒールを穿く友人が増え、158センチの私は身長を聞かれて意外がられることが何度もあった。ヒールを穿く人と穿かない人とに二分化し、穿いている人は母の言った入学式での光景が嘘であるように穿き慣れているように見えた。
でも、私がそうであるように、みながみなヒールを履きたい訳ではない。寧ろ入学式や就職活動といった公式の場でヒールを穿かされている人も少なくないのではないだろうか。深掘りはしなかったが、そう思った瞬間でもあった。
綿矢りささんの小説『かわいそうだね?』は、ヒールで足が豆だらけになり絆創膏を貼ってしのいでいるデパート店員の樹里恵が主人公だが、自らの意志でヒールを穿く女性にとって、見栄えとは健康を上回るほど重要なものなのかと疑いの目すら持った。
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ハイヒールを穿くのは必ずしも自分の意志ではないと知ったのは、2019年に#KuToo運動が起こってからのことであった。
入学式のような晴れ舞台のみでなく、日常的にハイヒールを穿かされている女性が多くいる。女性の健康を奪っていたのは、女性自身ではなく社会であった。
思えば私も#KuToo運動が起こる1年ほど前、ヒールすらないもののかわいいデザインをしたパンプスを穿き、違和感を覚えて家に着いたら足の小指が薬指に食い込み、自分でも驚くほど出血をしていた。パンプスの方が見た目も男受けもいいだろうと思っての行いだったことから、Twitterで「世の中は女性性を求めすぎなんだよ」と、けがをした足を撮影して投稿した。
その頃並行して就職活動も行っており、そのために買った靴にはストッキングからはみ出た生の血がついていた。
私生活でも公式の場でも見栄えのいい靴が求められる。これは私に限らず日本人女性に共通する事柄だった。
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幸い#KuToo運動の効果もあって、ハイヒール規定を設ける会社は減少していった。改めて考えると、外反母趾の患者の9割以上が女性で、その多くが社会人としての寿命が短かったからこそ長年可視化されてこなかったのかもしれない。
女性の社会人としての寿命が伸びた今日において、より女性の健康が約束された働きやすい社会となることが求められる。私の執筆活動がそのような活動に少しでも貢献できれば幸いである。