中学生の頃に出会ったコーチ。当時はただ恐い印象だった

私とKコーチとの出会いは、私が中学に入学して剣道部に入部し、初めての週末稽古のときだった。
Kコーチは当時、私が通っていた中学校の剣道部の外部コーチで、平日は営業マンとして働き、忙しい合間を縫って週末の練習に指導してくださりに来ていた。
彼自身も剣道部のOBで、当時の私にとって「とても厳しいコーチ」という恐い印象しかなかった。
私はコーチとの深い関わりを避けるように、練習後は逃げるように急いで帰ったり、時には大切な試合前にも関わらず部活動を休んでしまったり、部員の中で「1番弱い」ポンコツな私だった。

その厳しい練習の中でも、どこかではKコーチの優しさや、後輩に対する愛あるムチをひしひしと感じてはいた。
普段の練習はとても厳しい指導だったが、その成果も実り1年間団体戦で、全ての市大会で優勝し続け、県大会でベスト8を果たした時にすごく喜んで、たくさん褒めてくれたことを今でも忘れない。
彼は私たち後輩に、一生懸命にチームで取り組むことの大切さ、粘り強く諦めないことの大切さを教えてくれていたのだ。

中学卒業と同時に剣道を辞めた私は、その後一切Kコーチと会う機会は無くなり、剣道のコミュニティーからもめっきり離れてしまった。

10年ぶりの再会。すぐに信頼関係がよみがえった

私がKコーチに再会したのは、新卒就活の真っ只中の時だった。
就活をしている中で、「私は何を成し遂げたいのだろう……」とか、「どんな社会人になりたいのだろう……」と、出口のない迷路にはまっていた時に、私はKコーチと地元の居酒屋で再会をした。

ある時開いたFacebookでたまたまKコーチを見つけ、中学の時にお世話になったお礼を伝えたくて彼にダイレクトメッセージを送った。
私が就活で悩んでいることを相談すると、私の気分転換に彼はご飯に誘ってくれた。
Kコーチと地元の居酒屋で落ち合って、私は店に入るとすぐに彼を認識出来たが、彼は私だと気付かなかったのか気付かぬフリをしたのか、私を認識しなかったので私からとっさに声をかけた。

昔話や卒業後どうしていたのか、今に至る就活の近況まで、彼との話が尽きず、コーチと生徒だった中学時代の信頼関係がすぐによみがえった。
気付くと私は人生の先輩として、なんでも彼に相談をしていた。
ブランクだった約10年間が、まるで無かったかのようにお互いすぐ打ち解けた。

あのときのコーチの言葉が、今でも支えになっている

大学卒業と同時に、私は地元に戻って無事決まった就職先で働き始めた。
社会人としての明確なキャリアの抱負が定まらない中、Kコーチと再会したときにかけてくれた「Nattoなら、なんでも出来るよ!」という言葉が私の大きな心の支えになった。

営業マンから、今や教師になり、剣道部の顧問として活躍している彼の努力は計り知れないが、彼のかけてくれた言葉の通り、「本気になれば、何でも出来る!」は、今でも私の胸でメラメラと、私の夢をも応援してくれている。

結婚を機にアメリカに引っ越したので、なかなか彼に会う機会は無くなったが、いつまでも彼が心の中にいることを私は強く感じ、今日を生きている。

「本気になれば、何でも出来る!!」