アジア文化に興味を持ち、インドやタイ、中国や台湾のことを調べていて、中国人のゴウくんと親しくなった。本名ではないけれど、本人もそれでいいというから、ゴウくんと呼んでいる。

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ゴウくんは日本語が堪能で、楽しい人で、根は真面目だから、私はゴウくんを信頼している。政治的にはいろいろあるけれど、一個人としては中国の人とも仲良くできるし、やはり日本はもっと、アジアの国々と仲良くするべきだと思って、日本とアジアの政治についての本を読んでみることにした。
そこで私は、日本人として、日本の歴史をもっと知るべきだと感じた。

思っていた以上に、私は何も知らなかった。
アメリカ人に対し呼びかけた、ウクライナのゼレンスキー大統領の「Remember Pearl Harbor」という言葉には驚いたけれど、アメリカやウクライナの人はそう思っているんだろう。大統領は、ロシアからのウクライナへの攻撃は、日本の真珠湾攻撃と同じだという意味で言ったようだ。
そういうものだと、アメリカ人もウクライナ人も教え込まれてきた。自分たちの都合のいいような歴史解釈をしていたのだ。

それと同様のことが、日本でもあるんだと知った。中国や韓国の言うことを全面的に受け入れるべきだとは言わないけど、ここまで関係がこじれたことの原因の大部分は、日本にあると感じている。私では上手くこれを説明できないから、具体的な説明はここではしないけれど、戦争なんかしたら、植民地として土足で踏み込んだりしたら、どの国だってそれなりのことはする。日本も例外ではないということだ。

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中学生の頃、原爆被害にあった方の話を聴くことがあった。その場には、アメリカ人ALTの姿もあった。誰かに勧められたのか、自分から聴きに来たのかはわからないが、こういう経験がなければ、その先生は知ることのなかった話だろう。
原爆を落としたことを「戦争を終わらせるため」と、肯定しているアメリカ人も多いらしいが、そんな理屈が通るとは、到底思えないという日本人がほとんどだろう。それでもアメリカはそうなのだ。被害者の写真を見て、同じことが言える人はどれだけいるのだろうか。

原爆と比べるのは違うという人もいるかもしれないが、私たちも日中戦争のこととか、韓国に対してしたことについては、学校ではほんの少ししか習わないし、どんなことがあったかなんて、誰も教えてくれない。でも、知らなきゃいけないと思った。

原爆を落としたアメリカと仲良くやってるくらいなんだ、中国や韓国とも仲良くなれる。歴史を知り、文化を知り、尊重しあえれば、政治的にももう少し友好な関係になれるんじゃないかという気さえしている。

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少なくとも、一人の日本人として、中国人のゴウくんとも親しくなれた。私は彼のことを、話していて心地いい人だと思うし、尊敬している面もある。
ゴウくんは私と付き合いたいと言ってくれるけど、彼氏がいるから無理なんだよね、ごめんねと答える。持ち前のかわいらしさを武器に、まだ諦めずに近づいてくるのをいなしている。少しは学びつつも、めげる様子がなく、愛嬌を振りまいてくるから、狗(中国語で犬のこと)くんなのだ。

それでも関わりをたたないのは、思いが叶わなくてもいいから関わっていたいというゴウくんの願いと、それ以前に大事な友達で、この先幸せになってほしいと私が思うからこそだ。
ゴウくんが私を求めるのは、愛情に飢えているからで、私のことを好きなわけではないのはわかっている。そのことに気が付けるくらい大きくして、巣立ってもらおう。それが私のゴウくんに対する思いだ。そういう意味でも狗くんという呼び名は、間違っていないかもしれない。

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虎視眈々、彼氏の座を狙うゴウくんは、虎とは言わないまでも、犬より狼に近いかもしれない。それでもやっぱり、いろいろ幼いゴウくんは、私にとってはかわいいわんこなのだ。そしてこの座は、どうやっても取れっこないと知っているから、彼氏も余裕がある。

日本人でここまでぐいぐいくる人は珍しいから、やっぱりお国柄かななんて思ったりもするけど、話している限り、同じ人間の中でも、アジア人な分、感覚も他の国の人よりは近いんじゃないかという気がする。

読んでいた政治についての本では、日本と中国が近いうちに戦争を起こす可能性を考えておくべきだとも語っている。そんなことになったら、日本人も中国人も悲惨な目にあうことは、ニュースのウクライナ侵攻を見ているだけでわかる。
それを食い止め、出来れば協力し合って、お互いよりよい国になることを目指せるよう、私の国とゴウくんの国が仲良くなれるよう、出来ることをしていけたらと思っている。