私とMちゃんは中学校の友達だった。教室に通えなくて学校の相談室に登校していたSちゃんという子がいて、その子のいる相談室へ、私とMちゃんとNちゃんとTちゃんの四人の女子でお昼を食べにいっていた。

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私とMちゃんと他の女の子には共通点があった。クラスで弱い立場ということだ。それだけで一緒にいたわけではなかった。話もあったし、お互い好きだったと思う。
でも誰かに虐げられていたから、私達はあれほど結びついていたのではないかと思う。お昼に相談室にいる時は束の間、私達は安全な避難場所で、心を解き放って少女らしくお喋りしたり遊んだ。たくさんのごっこ遊びもしたし変顔をしあったりしていた。

私達はその時、今を生きていた。学校という居心地の悪い空間に通い続けていられたのは相談室に居場所があったからではないかと思う。
MちゃんはTちゃんと特に仲が良かった。私はその時、友達の誰からも選ばれないと思っていたので二人が羨ましかった。

Mちゃんはサラサラのロングヘアに可愛い顔をして、大人しいけれど明るくて優しい女の子だった。Mちゃんは最後は必ずTちゃんを選ぶけれど、私のことをなぜか尊敬していた。
私は当時、気が弱いくせに少しイキっていた。女子には強く言えないけれど男子には強く言って、まるで世界のことはなんでも分かっているような痛い中学生だった。
そんな私がMちゃんにはなぜかかっこよく見えたらしい。たまに「かおるちゃん、かっこいいね」と言ってくれた。私は少し嬉しかったが、Mちゃんは私のことを勘違いしていると思っていた。

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私達五人は中学卒業後それぞれ別の高校に行き、それからだんだん疎遠になっていった。
私が二十三歳の時、私は心のバランスを崩し、実家で大人しく過ごしていた。
当時、私はとても情けなかった。こんなふうになるために今までがんばってきたわけではないと思っていた。そしてある土曜日に近くの川を散歩していたらMちゃんに会った。Mちゃんから話しかけてきたのだ。

Mちゃんは保育士として働いていた。そして中学生の頃の大人しそうな感じはなくなっていて、保育士として働いているうちにそうなったのか、キビキビとしていた。
そこに昔見た私を小さいヒヨコのように尊敬する女の子はもういなかった。そして、Mちゃんと接して、いかに自分が弱ってしまい、あの頃のダメな所もそのままであるということに気づいた。私はMちゃんと話しているうちに疲れてしまい、早くこの場から離れたいと思った。

Mちゃんと公園の前で別れて私は一人で歩いた。
Mちゃんはもう中学生の頃のMちゃんではないのだ。私は今いったい何をしているのだろう。大学の友達はとっくに新卒で働きだしている。私はなんで私だけがと思った。
Mちゃんの前でかっこいい私ではいられなかった。情けなかった。そしてもうMちゃんとは昔のようには戻れないと思った。

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二十五歳になった私は、去年内定をもらった会社で働いている。かっこいいかというとそうではないと思う。
Mちゃんと再会した時のことを思い出すと、私は以前と違った感情をもつようになった。
今でもMちゃんともう一度あの頃のように戻れることはないと思う。

でも、私達は変わり続ける。また新しい関係が築ける可能性だってないわけではない。自分がだめだと思ったことに関しても、今だめでもこの先ずっとそうかは分からない。そして私は中学生の頃みたいに今を一生懸命生きていればそれでいいのだと思うようになった。
過去を振り返る時があってもいいかもしれないが、今が何より大事なのだ。