中学2年生になり、クラス替えがあった。クラス内でグループが形成される前に、私から積極的に話し掛けて友達になった子がいる。
やがて彼女も私に懐いた。通っていた中学校では、仲の良い友達ペアは、進級の際も同じクラスになる確率が高かった。案の定、私と彼女は3年生でも同じクラスになった。
だが、進級してすぐに、彼女は不登校になった。たまに近況を伺うメールのやり取りはしていたが、彼女が学校に来る気配はなかった。

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学校に来ない理由は、何となく分かっていた。歳上の彼氏の影響だ。彼氏と出掛けたり、背伸びして化粧も一層派手になった。
ある日、突然彼女が登校して来た。髪色は地毛の黒から赤へ変わり、薄らと化粧もしていた。遠目からでも直ぐに分かった。
登校後、彼女は指導のために別室に呼ばれた。校則違反を注意されたのだろう。彼女がクラスに戻ってきてから、私は挨拶以外の場面で、彼女を避けた。私が彼女を見放して、彼女が違うグループに溶け込むまでの間、彼女は一人で、浮いていた。

私には、彼女が再び登校し始めた理由も分からず、変わり果てた姿の彼女に掛ける言葉が見つからなかった。
「あれだけ2年生の時、仲が良かったのに」
「あの子、1人だよ。かわいそう」
「あなたにとって、あの子は友達じゃなかったの」
周囲からの囁きは嫌でも耳に入った。だが、「この子と必要以上に関わるべきではない。あの頃の彼女とは違う」と私は感じていた。
突如舞い戻ってきた彼女を、即座に受け入れる度量が私にあれば、状況は変わっただろう。だが、当時の私にはそんな器はなかった。

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属するグループは別のまま、大した会話もないまま、私たちは中学校を卒業した。私は地元の高校に、彼女は隣の市の高校に合格した。
本来、彼女は優秀で、不登校になる前は学力は申し分なかった。だが、茶髪に染め直すなど、度重なる校則違反を繰り返して内申点は下がり、勉学の遅れを取り戻せず、偏差値を下げて高校進学をした。
「あの時彼女がグレずに、あなたとずっと仲良しだったら、彼女の人生も変わっていたかもね」「彼女の本当の実力なら、地元の高校に合格できていたのにね」と、卒業するまで外野は言い続けた。

高校1年生になり、他の高校に通う子たちの近況が耳に入った。彼女は、同じ中学の子と楽しく通学しているという。少し安心した。
だがしばらくして、彼女が退学したという噂を耳にした。やっぱりなと感じた。
私には関係ない。そう考えていた矢先、彼女が突然家に押し掛けてきた。
「今度、彼氏と九州に引っ越すんだ」と宣言されて驚いた。彼氏とまだ続いていたのか。未成年の高校中退者が実家を出て、いつ捨てられるか分からない中で、経済力が不明な男について行って共に生活するなんて。親が認めるはずがない。どうかしている、と感じた。
だが、彼女は本気だった。以降も何度か「家に行きたい」と連絡が来たが、全て断った。
ついに、彼女からの連絡は途絶えた。

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周囲に彼女の近況を知る者はいない。
今、当時の彼氏と結婚したのかな。どこで何をしているの。気にならない、と言えば嘘になる。
中学時代にもっと「学校においでよ」「一緒に地元の高校を受けようよ」と積極的に誘えば良かった。家に訪ねてきたときに「私たちの年齢で、彼氏について行って県外に住むのは早すぎないかな」と一言意見したら、彼女は違う未来を歩んだかな。私の手に負えない、と身を引くのではなく、友達として手を差し伸べていたら。彼女への接し方に悩んだ際、気持ちを隠すのではなくて、第三者に相談していたら。
彼女との思い出を振り返る度に、後悔の波が押し寄せる。彼女と真正面から向き合うことから逃げた、過去の私は最低だ。

自分を正当化するために隠していた胸の内を、今回吐き出してみた。どうか、彼女の選択した人生が幸せでありますように。