今まで、数え切れないほどの恋愛をしてきた。
普通恋愛は楽しいものだが、私の場合、そうではなかった。
思い出したくもないような苦い経験。
そればかりで埋め尽くされていた。
◎ ◎
「好きか分からなくなったから別れよう」
これは、短大を卒業して初めてできた彼氏に言われた言葉である。
当時の私は、今まで男性との関わりがほとんどなかったためか、初めて彼氏ができて相当浮かれていた。
彼との出会いはSNS。最初は趣味友達として話していたが、メッセージのやり取りを重ねていくうちに、いつしか恋愛関係に発展した。
趣味が合い、話していると楽しかった。
彼が住んでいたのは同じ県内だったが遠方で、バスを乗り継いで向かったこともある。
彼の家で、彼の特技だったギターと歌を聴かせてもらったりもした。
とても楽しいひと時だった。
映画を見に行ったり、美味しいものを食べに行ったりもした。
毎晩寝落ち通話もしていたほど、かなり親密だった。
しかし、そんな楽しい時間も悲しいことに長くは続いてくれなかった。
付き合って3カ月ほど、だんだんやり取りが少なくなっていった。
四六時中連絡を取っていたいタイプの私は、彼を相当責めてしまった記憶がある。
そんな中で、冒頭のセリフをついに言われてしまったのだ。
あまりにも短く儚い、交際だった。
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そこから私は彼氏が途切れることはほぼなかった。
アプリやSNSで出会い、すぐに恋愛関係になっていった。
中にはセフレと呼べる関係の人もいた。
付き合っている時や遊んでいる時は楽しいが、いつしか漠然とした不安を抱くようになっていた。
私はこのままで良いのだろうか?
ちゃんと結婚して、子どもを産むことが出来るのだろうか?
普通の人生をこれから送っていけるのだろうか……?
元々結婚願望は強い方ではなかったが、人並みにちゃんとしたいという気持ちはあった。
そうした不安を抱えながらも、やはり目の前の楽しさには逆らうことは出来なかった。
これからのことは、意識的に見て見ぬふりをしていた。
◎ ◎
そんな中で、夫と出会った。
それから男遊びはぱったりやめた。
2人の子どもにも恵まれ、望んでいた順風満帆な日々を送るはずだった。
今、夫とは離婚調停中だ。
あの時ああしていればと後悔することばかりだが、もう離婚に向けて気持ちは固まっている。
どこで道を間違えたのかは分からないが、これからは強く気持ちを持つしかない。
過去の苦い恋愛は、時が経った今、思い出へと変化している。
あんなこともあったねと今ならきっと笑って言える。
今、私は夫とのことで深い苦しみの渦中にいる。
楽しかったあの日々に戻りたい、そう願うことも少なくない。
けれどきっと笑って過ごせる日が来るはずだ。
今の悲しみも、同じように時が解決してくれるはずだ。
その時まで私は、気持ちを強く持ち続けていたい。