私は標準体型の女だ。
ものすごく太ってもいないし、ものすごく痩せてもいない、いたって普通の体型だけど、私はこの体が好きだ。
周りの友達はみんな、痩せていることが何よりも女のステータスであるかのように一生をかけたダイエットに励んでいる一方で、私がこんなに自分の体型を受け入れ、好きになれているのには、ある恋愛があったからだ。
人生で一番夢中だった人との大失恋が始まりだった
大学生の時、私は大失恋をした。
当時、1年以上にわたり付き合っていた体育会系の彼は、私が人生で一番夢中だった人だと思う。
彼は、こういう人をいわゆるソクバッキーというのかと思うほど、おかしいくらいに嫉妬をする人だった。
彼と付き合っていく中で、飲み会にスカートは禁止、男の人と話すの禁止、笑顔振りまくの禁止など、今考えたら笑ってしまうようなルールが増えていった。
彼は、見た目とは裏腹に、とにかく愛情を確認しないと不安になってしまうタイプだったけど、私はそんな彼が可愛くて愛おしくて仕方なかったし、彼の全てに応えてあげようと必死だった。
しかし、突然お別れはやってきた。
「ニコニコ他の男と話しているのは見てられない。彼氏は俺じゃなくていい」という言葉と共に彼とはお別れした。
その後、彼から連絡があり、忘れられないからもう一度付き合ってほしいと言われ、喜ぶ犬のように尻尾を振りながら付き合ったもののやはりまた振られ、大好きな人に2度フラれた私のメンタルはボロボロだった。
失恋の傷が癒えていない私と付き合いはじめた彼
体重も10キロほど減り、ご飯を食べるとお腹を下し、大学の友達にも心配されたが、自分でもどう傷を癒していいかわからなかった。
失恋ってこんなにしんどいんだな……と思ったのを覚えている。
そんな失恋の傷が一ミリも癒えていない私に、当時付き合ってほしいと言ってきた男の子がいた。
タメで、タバコを吸う人で、いかにも遊んでそうなイケメン。普段の私なら絶対に付き合わないタイプだった。
でも当時の私は、誰からでもいいからとにかく愛されたかったのだろう。
前の彼氏のことがまだ好きな状態でよければ、とだけ答えて付き合うことにした。
私のぶっきらぼうな回答に対してもガッツポーズをしながら「絶対忘れさせるから大丈夫!」と言った彼の無邪気な笑顔が少し可愛かった。
付き合ってからというもの、くだらないことで笑わせてくれたり、会いたい気持ちのまますぐ会いに来てくれたり、惜しげもなく愛情を注いでくれる彼に、なぜ私のことが好きなのか聞いてみたことがある。
「めちゃくちゃスタイルいい所が好き」
私は嬉しい反面複雑な心境だった。
標準体型から10キロも減ったら、流石にスタイルは良くなるが、私が元の体に戻ったら彼は私を嫌いになるのだろうか。
「スタイルがいいところが好き」と言う彼。抱き始めた違和感
そんなことを思いながらも、徐々に私の失恋の傷は癒えていった。
傷が癒えていく中で、徐々に食欲も戻ってきた頃、彼とベッドに横になっていた時のことだった。
彼が私のお腹をつまんで一言。
「なんかちょっと太ってきたんじゃない?」
恐れていたことが起きてしまった。
傷が癒えて回復してきただけなのに、彼からしたら太ってきたというのだ。
そうかな〜?ととぼけつつ、私は以前の標準体型になった。
その頃には彼から食事の量も指摘されるようになり、なんのために彼と付き合っているのかわからなくなっていた。
と同時に、彼は私の内面を好きなのではなく、私の外見、もっというとスタイルを気に入っていたのだということにやっと気づいた。
私は、ありのままの自分を受け入れてくれる人に愛されたい。
そうじゃなきゃ自分が可哀想だ。
そう思い、彼との別れを決意した。
彼は悲しそうな顔をして別れを渋ったが、私は自分を大事にすることに決めた。
結果、お別れすることになったけれど、今までで一番健康で、一番好きな自分でいられるのは彼との時間があったからだ。
大事なことに気づかせてくれた、あの彼には今でも心から感謝している。