どのくらい前からなのか。
体型に関する問題は昔からあるように思う。
誰がどの基準で設けたのかも謎なのに、それに沿って体型維持するのは誰もが通る道ではないだろうか。
私もその中の1人だった。

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元々45kgで標準体型だった私は高校生の頃、「痩せなきゃね〜!」と友達と笑いながら会話しつつお菓子を食べる日々。それが当たり前で楽しかったりもした。
楽しかったものの、体重は増え続け、ついには最高体重の54kgに。
そこからは数字にとらわれるものの、友達とのお菓子の時間も減ることなく、私の入ったクラスでも、家庭科の項目を中心に学ぶ学科だったので、調理実習がほとんど毎週あり、食べることが元々多く、高校生ということもあり食欲はどんどん増していった。
そのまま高校卒業まで54kgをキープしていた私は、美容専門学校に進学し、さらに自分の"太さ"に落胆することになる。

美容師を目指す学校。
可愛い子や細い子、綺麗な子やカッコいい子までいて、すぐに周りの子たちと自分の身体を見比べた。
そして感じた焦り。
その日から、体型も服装も周りに合わせなきゃ!と毎日頑張ってメイクをして、頑張ってオシャレをして学校へ通った。

ただその頑張りも長くは続かなかった。
開き直りもあったのかもしれない。
服装もメイクも気にせずに学校へ行った。
ひとりのクラスメイトの男の子が「俺、そっちの方が好き!」と褒めてくれた。
体型で悩んでいた事なんかすぐに忘れて、私はそのまま恋に落ちた。
スッピンで、服装も頑張っていない私を褒めてくれる人もいるんだ……!という気付きにもなった。

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そこから私はその彼に猛アタック。
その当時、彼には彼女がいたけど、好きで好きで仕方なかった私には関係なかった。
私の猛アタックに半年ほど押されていた彼は、観念したかのように付き合っていた彼女と別れ、私と付き合ってくれた。

学校に一緒に行ったり、放課後も遊んだりして、毎日が本当に楽しかった。
そして彼と付き合っていく中で、私はもっと自分に自信を持ちたくなり、また体型を気にし出した。
その時の私は相変わらず54kgのまま。
痩せて彼に釣り合う女性になりたい、と思ったのだ。

ただ、太り方は分かっても痩せ方は知らなかった私は、1番簡単な方法だ!と思い、やってはいけないダイエットと言われている「食べないダイエット」を始めた。
数字は簡単に減っていき、顔も痩せてきて可愛くなっていっているように感じ、今まで興味があまりなかったオシャレにも積極的になった。
それだけで止まれたら良かったが、数字が減っていくことが快感になり、食べないダイエットで10kg落とし、体重は44kgになった。
美容体重が流行っていた時期でもあったから、その体重をクリアした!という達成感もあった。

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でもそこから体調がどんどん崩れた。
毎年の夏バテが当たり前になり、生理前のPMSや生理痛が酷くなり、肌は荒れ、髪のツヤも無くなっていき、何より食べることが怖くなった。
そんなことになっても、体重が増えることの方が当時の私にはとても怖かった。

それからの数年は太ることなく、思い込みからか、身体の順応かは分からないが、いつの間にかどれだけ食べても太らない身体ができあがり、食べることが怖くなくなった。
その間に専門学校を卒業し、美容室への就職や転職をしたりと忙しくなり不規則な生活になったものの、ずっとその体重でいられたからか自信もついていた。

そんな時に決まった地元から埼玉への引っ越し。
彼との遠距離恋愛、引っ越してからの就職先、新しく友達ができるのかどうか等、不安が一気に押し寄せた。
それがまた食べることへのスイッチとなった。
体重は5kg増え、50kgを行ったり来たり。
そこが新しい標準となった時、私はまた自信を失くした。
そこから続くように彼と別れ、仲の良かった地元の友達とも縁が切れ、私はどん底に落ちた気分だった。

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そんな時でもご飯は美味しく、ご飯を食べている時がとても幸せだったことに気が付いた。
「どん底にいる場合じゃない」と思い、運動を始め、健康になるための勉強も始めた。ヨガを試したり、筋トレをしたり、ダンスもやってみたり、カラオケではどれくらいのカロリーが消費されるのかを実験してみたり。
夢中になってたくさんのことを試していると、いつの間にか身体は締まり、体型の事を気にしなくなっていた上に、生理痛が軽くなっていたり、肌荒れもしなくなっていた。

その時からだろうか。
「今の自分が一番好き」と思えるようになった。
誰かが勝手に決めた基準に踊らされることなんてない。私の幸せは私が決める、決められる、と気が付いた。
太っていても痩せていても私は私。
自分にとってのベストな体型・体重は私だけのオートクチュール。
それに気が付いた時、同じような考えを持った人たちとの出会いがあった。

類は友を呼んだ。
どこかの誰かが作った理想は自分を苦しめたけれど、その苦しみがあったからこそ今の幸せがある。
どんな体型でも自分を愛していれば、自信に繋がり、素敵な友達も集まり、さらに幸せになれるループが出来上がる。
自分で自分を否定することはない。自分が1番、自分を愛してあげたい。
これは、私が学んだ9年に渡る体型による出来事。