金曜日、19時。基本的に残業はしない主義。というか、したくない。1分1秒でも私の時間が会社に持っていかれるのが嫌だからだ。手早くノートPCを閉じ、席を立つ。
「お先に失礼しまーす」
決まった挨拶、変わらない帰り際。そんな中、いつもと少し違うことが1つ。休み前日でルンルン気分な私の心だ。
広告代理店でOLをしている私は、毎週土日休み。以前まで美容の職に就いていたが、土日休みと連休がなかなか取れないこともあり、今の職場で働き始めた。
休みが固定されていると予定も立てやすく、なにより連休だとしっかり休んだ気になる。そのため、金曜日の夜にとことんお酒を飲んで土曜日に二日酔いで動けなかったとしても、日曜日に行動はできるのだ。お酒を飲むことが生き甲斐の私にとって、とても有難いことである。
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定時に仕事を切り上げた足でスーパーへと向かう。ちょっとだけお高めのお酒とおつまみの材料を購入し、帰路につく。そう、私のお休みは、仕事が終わった金曜日の夜から既に始まっているのだ。私のお楽しみであるその瞬間、それは「飲みながらおつまみを作り、おつまみを食べながら飲むこと」である。
一見、平日の夜にも出来そうなことではあるが、仕事がとても忙しく、おつまみを作る気力が湧かないのだ。毎日定時で上がっているとはいえ、手を抜いて仕事をしているわけではない。定時で上がれるようにするために、必死に取り組んでいるのだ。
そうなると、金曜日の夜にゆっくり時間も気にせずお酒を愉しむ方が良い。どんなにだらしなく過ごし、お酒を飲んで下品に笑おうが、このOLを叱る同居人はいないのだ。
一人暮らしが寂しいと思ったり、誰かと晩酌したいと思う時もあるが、自由な時間を過ごしたいと思うと、やはり一人の方がいいのかもしれない。特に私のようなタイプの女は。
フライパンに火をかける。オリーブオイル、刻んだニンニク、唐辛子。匂いを愉しみながらハイボールを一口。うん、最高。そこにエビなどの具材を入れて炒めていく。買ってきたチーズもお皿に盛って、クラッカーなんかも用意してみて。
さぁさぁ、おひとり様晩酌のはじまりはじまり。
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時間を気にせずゆっくり飲んで愉しめる貴重なこの時間。誰にも邪魔されず、気を遣わず、居心地のいい空間でもある。
平日の夜にお酒を飲むことはあっても、「濃いめ」で飲むことはほとんどない。濃いめはお休みの日の特別。ウイスキーの香りが鼻を抜け、高揚している私の気持ちを更に押し上げる。
たまらない、幸せ。ハイボールを濃いめにすることによって、私の一部になっていくのを強く感じる瞬間だ。仕事のことも、上手くいっているのかどうかもよく分からない恋のことも、とりあえず今この瞬間だけは忘れてお酒と一人の時間を満喫する。
当たり前だけど、お休みっていいもんだ。一人の時間の有り難みを再認識させてくれる。過ごし方にもよるかもしれないが、私の場合はそんな感じだ。
本日は金曜日のため、ハイボールを濃いめにしてお送りしております。それがお休みの合図だってこと、ここだけの秘密ね。