お酒と美味しいおつまみのマリアージュ。ひとり晩酌で楽しむ
お酒が好きだ。量はそんなになくていい。その代わり、美味しいおつまみが欲しい。
ロング缶のビールなら、ウェッジカットのフライドポテトかジャーマンポテトがいい。芋は好きだ。長期保存が効くから買いやすく、揚げ焼きにすれば手軽にビールのお供にできる。もちろん、グラスをキンキンに冷やすことを忘れずに。
赤ワインにはチーズとチョコレート。スーパーに置かれている、少し良いお値段のものを。フルボディの渋みと、塩気が強めのチーズと、香り高いブラックチョコレート。永遠に味わえるから、うっかりひと瓶開けないように気をつけなければならない。
実家からたまに送られてくる日本酒。ありがたい。塩辛できゅっといくと、温泉に浸かったときのように脳から幸せが分泌される。もったいない気持ちを抑えて、もらった日本酒を使って金平ごぼうを作ると、心底うまい肴になる。
家族や気の置けない友人と一緒に楽しむのも良いけれど、私はひとりで晩酌をするのが好き。
お酒とおつまみ、それぞれの美味しさ。そしてマリアージュされた味わい。じっくりと向き合って、真摯に味わいたいからだ。
荒んでいた頃は、ブラックな職場を忘れたいと飲んでいた
働くようになってから、毎日のひとり晩酌が始まった。私に合っているストレス解消法はこれだ、と早々に確信すると、少しずつお酒の量が増えていった。
美味しいという快楽をできるだけ長く感じていたい。ブラックな職場のことを忘れていたい。
朝目覚めて、潰されただけの缶や流しに放りっぱなしのお皿を片付けながら、出勤時間が迫り来ることに涙した。遅くまでの深酒で睡眠不足だし、頭も痛い。二日酔いだ。
楽しかった夜の記憶はとうに消えた。スーツを着て化粧をしながら、今晩何を食べて飲むか考え出す。まるで現実逃避だ。
しかし、連日の暴飲暴食が一瞬頭によぎり、我慢をした方がいいんじゃない、と理性が意見した。当然、無視を決め込む。
この頃は荒んでいた。買い込んだお酒と食べ物が尽きてしまっても満たされないと、近所のコンビニで追加を買ってしまう。酔っ払って胃が膨れて気持ち悪くて吐いてやっと、眠ることができた。
心配してくれた周りのおかげで、ゆっくり味わうことを思い出した
まともな晩酌に戻れたのは、私の周りの人たちのおかげだった。吐きすぎて体型がすっかり変わってしまった私を、たくさんの人が心配してくれた。
特に世話を焼いてくれたのは、二回り年上の職場の先輩。
野菜が美味しいとか、新鮮な魚とか、そういったのが売りのお店に連れて行ってくれて、ゆっくり味わって食べることを思い出させてくれた。こだわりのお米やお惣菜をお取り寄せしては、いっぱい届いちゃったからお裾分け、とプレゼントしてくれた。
どれもこれも、なかなか高価な物だったと思う。それらをいただくときは、ノンアルコールにすることが多かった。酔いで鈍った舌で味わうなんて、もったいない。それに、もし飲みすぎてしまったら、彼女に申し訳ないから。
まともな夜が少しずつ増えていった。自分で作った料理をきちんと食べることができる。現実逃避の道具にしない。ストレスを見ないようにするためではなく、楽しむための食事は心を穏やかにさせる。
今日は何を食べようか。甘い冬大根があるから、煮てみよう。お醤油が芯までしみしみしているやつ。
きっと、日本酒に合うに違いない。