私の隠しごとは、年下のアイドルにどハマリしていることだ。
数年前のステイホーム期間中、当時大学生だった私は時間を持て余して動画ばかり見ていた。料理アカウントや女優さんのアカウントなど、たくさん見たが、1番はまり込んだのは、男性アイドルだった。

自分で言うのもなんだが、私は世間からしっかりしている、と評価されている。後輩からは、頼れるお姉さん的な存在だと言われる。他者からの印象ほど自己評価は高くないが、年齢の割に落ち着いていると思うし自立している方だと思う。
しかし蓋を開けてみたら、年下アイドルにときめく普通の、いやちょっとオタク気質な20代女性だ。

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少し前まで一人暮らしをしていて、当時は休日はもちろん、朝の出勤前でも彼らの出演している音楽番組を再生していた。就寝前は彼らの動画をスマホで見ないと眠れない体質だった。休日の前の日は、動画を再生したまま寝落ちするのが幸せだった。
今は1年ほど付き合っている彼氏と同棲している。もちろん、彼氏は私が年下アイドルオタクという事実は知らない。

同棲が決まったとき、馬鹿げた話だが、「私、あの子たちの動画見ずに寝られるかな」と心配になった。実際、同棲がはじまるまでの期間は勝手に練習、と称して、寝る前動画を自粛していた。自分で振り返っても、オタクすぎて面白い。そして同棲中の今、彼氏が気付いているかどうかは別として、休日の朝は彼氏より早く起きてアイドルを見ている。
幸い、彼氏はテレビをあまり見ない人なので録画機能は私専用状態。彼氏の前で録画リストを開いたことはない。年下アイドル番組だらけだから。

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これはオタクの本能だと思っているのだが、いわゆる推しが出演している番組は録画リストから削除できないのだ。ほんの数分だったとしても、しっかり切り取ってとっておくのだ。オタク女子たちなら理解できると信じる。

彼氏の帰りが遅いときは、寝室で横になりながら、ひたすらアイドルの動画を再生している。あー、かっこいい、とかもしっかり口に出している。そして玄関の鍵が開いたら、何事もなかったかのように「おかえり!」と迎え入れるのだ。我ながら意味不明な努力だ。
スマホだってオタクアイテムのひとつ。
彼氏は普通に自分のスマホを私に預ける。でも私はそれができない。だって、画像フォルダには山程アイドルがいるし、動画アプリのおすすめ欄は全てアイドルだし、SNSのオタクアカウントもある。

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彼氏は私のそんな一面を知ったところで、大して気にしないと分かっている。なんなら既に気付いているかもしれない。だから、これらの行動は私の意地なのだ。しっかり者の頼れるお姉さんキャラを保ちたい私の変なプライドなのだ。

最近は、女性はひとつやふたつ秘密がある方が美しい、という情報をインターネットで目にして、自分の年下アイドルオタク事情を正当化し始めた。これは秘密にしたままの方が、私が美しくなれる。いやそんな訳はないが。分かっているが、そんな馬鹿なことを考えてまで自分のプライドを守りたいのだ。

どうか許してほしい。そして私の事実に気が付いてしまったとしても、どうか知らないフリをしてほしい。私は私のためだけに、このおかしな隠しごとを守り続けようと思う。