人生の夏休みと称される大学生の夏休みを経験して7年後のこの夏、ずるい私は2度目の人生の夏休みを経験した。28歳にして大学院に入学したことによる夏季休業期間である。
同世代の友人たちはキャリアも中期に差し掛かり、忙しい日々を過ごしているのを尻目に、バイトもそこそこにして、開き直って2ヶ月間の休みを腰を据えて過ごした。
その中で経験したものの一つが、人生2度目の混浴体験だった。

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大学院受験を目前に控えた昨年の冬、かねてから興味のあった混浴を初めて体験した。
行き先は秋田県の乳頭温泉郷。混浴は性の商品化なのかを考えたかったのと、必ずこの経験はどんな形であれ、私の人生へプラスになると信じての実行だった。
結果、より大学院への進学を決意させてくれた重要な節目となった。私の直接の研究テーマとは一見関係ないものの、これが私個人の初めてのフィールドワークだったと思っている。

そんな強烈な思い出を忘れられず、この夏休みを利用して2回目の混浴体験を行った。
場所は甲府駅から2時間程の山奥にある秘境。車の運転がからきしダメな私は、山道かつ雨天ではドライブはできないと諦めて、山登りを兼ねた訪れとなった。マイナスイオンを存分に感じつつ、熊出没の看板にビクビクしながらも、なんとかその温泉に辿り着いた。
今回のフィールドワークは前回とは違い、前期に受けた研究方法論の知識を生かした現地調査ができるとワクワクしていた。そしてその期待は裏切られなかった。

温泉は複数あり、全てが混浴の露天風呂だった。男女共にタオルを巻いての入浴が可能で、私を含めて8人が、秋の匂いすら感じる9月の昼下がりを満喫した。
当然写真を撮ることも、その場でメモを取ることもできないため、温泉に浸かりながらこの現実を頭の中に記録していった。そしてのぼせる前に充実感を胸に温泉を後にした。

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これは完全に私の趣味に相まったものであるため、この経験が何か論文になることや、継続的な調査になる予定は今のところない。しかし、私自身が仕事を辞めてでも学生として研究していることが、いかに振り幅広く私の人生に彩りを加えてくれるのか知ることは、私自身が幸せを感じるためにも大切だと感じている。

最近はQOL(クオリティーオブライフ)など、いかに人生の質を上げるかという意識が高まりつつある。それは趣味の時間確保であったり、思い切って質の良いタオルに買い替えたり、取り入れ方は多様である。
私個人的には、休みの時間の捉え方でもQOLは上がると信じている。
大学生の時に経験したひたすらに長い夏休み、会社勤め時代の指折り数えて昼間までベッドに身を沈める土曜日、教員として子どもたちとテニスをする休みなのか何なのか分からない日曜日の朝。様々な休みを体験してきた上での、今年の大学院生としての夏休み。
単純に時間があり過ぎても幸せには直結しないことは大学生の時に学んだ。そして体力が残っていなければ沼のように過ぎていくことも分かっている。だからこそ、この休みの意味を考えたかった。

身体をひたすら休ませることも当然大切。意味を与えるために無理にアクティブに過ごす必要はない。休みの日数でも過ごし方は変わるだろうし、誰と過ごすかでも大きく変化するだろう。ただ、休みに意味を与えるということを、「自分の生活の質を上げる」ことだと捉えられれば良いのだと思う。休みの内容ではなく、その休みが自分の人生にとって大切な時間だったと思えればそれで良い気がする。

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この夏に経験した混浴を始めとする経験が、私のQOLを上げてくれたかは懐疑的。ただ、この休みは来年もやってくる。そしてそれが恐らく最後の「休み」を考える時間になる。
卒業する時に得たと実感できるものが専門知識だけではなく、その後の人生の質を変えてくれるようなものであってほしい。
だって、混浴温泉の考察が、今現在の幸福度だけではなく、この先の私の人生の面白いスパイスになってくれるかもしれない。
来夏へ乞うご期待。