隠しごと、というほど大層なものではないが、社会人になったときに決めたルールがひとつだけある。
それは、昼食は必ず自分で作ったお弁当を持っていくこと。

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料理をすることは、私の趣味のひとつである。スーパーのチラシを見て、作る料理を決めるところからすでにワクワクしているほどだ。スーパーに行って食材を選び、安く売られている野菜や商品を見て、いいと思ったものをその場で買うことに決める瞬間も多々ある。もちろん衝動買いも然り。

社会人になるタイミングで、一人暮らしを始めることにもなったため、健康や自分のやりたいことで充実させようと考えたことだった。実家にいるときは、食事は母が作ることが多かったため、私が料理をすることは少なかった。自分だけが食べるために料理をしていても、家族がそれに気づき手や首を伸ばしてくることも何度かあった。そのため、自分が自分のために料理をするという時間が作れることが嬉しくもあった。

お弁当を作るにあたって、メニューにもこだわりを持っている。必ず1種類は野菜を使ったメニューを入れること、そして、タンパク質が補える肉類を入れることだ。

私は、もともと野菜が好きで、野菜サラダは毎日食べたいくらいの人間である。そのため、お弁当のメニューにも、葉物野菜を使ったおひたしや和え物を入れようと決めた。肉類を入れることにした理由は、野菜に目を向けすぎて、満足感が得られないということをなくすためだ。

しっかりと食べるけれど、野菜もしっかり摂れるメニューを心がけた結果、今のお弁当のメニューとなった。

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お弁当箱にも、ちょっとしたこだわりがある。と言っても、デザインや使いやすさで選んだものが結果的に今の使い方につながったという結果論なのだが。

お弁当箱は、実家から持ってきた思い入れのあるものではなく、一人暮らしをするために引っ越してから雑貨屋さんで買ったものである。自分が食べられる量は少ない。外食で出てくる1人前は食べきれるものの7割ほどでお腹が膨れるため、完食するまでに時間がかかる。そのため、お弁当箱も小さめでありながら作りもシンプルで、洗い物もしやすいことを条件に選んだ。

職場の人からは、この小ささに「足りるの?」と定期的に聞かれているが、私は十分お腹がいっぱいになる。食べ飽きる前に食べ切ることもできるので、ちょうどいい量なのだ。

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そんなこだわりだらけのお弁当を作っている時間は、とてもワクワクしている。一人暮らしを始めてから続けているマイルールではあるものの、こんなにも続けているのはこれくらいだろうか。

最近では、自分の作った料理が一番心地いい味になってきていると感じることもある。コンビニやスーパーで出来合いのものを買うよりも、自分でイチから作った料理のほうがホッとするのだ。多くの人がコンビニのほうが便利、美味しいと答えるだろうこの時代に、自分のご飯が美味しいと思えるのは、なかなか貴重なことだな、と自分でも思う。

そのため、職場の近くにコンビニやスーパーはあるものの、自炊したものをお弁当箱に詰めて持っていくスタイルを続けているのだと分析する。

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たまに、明日は何を持っていこう、アイデアが浮かばない、そんな日もある。しかし、そんな日こそ冷蔵庫の中の残り物で作れる簡単な料理にしてみたり、アプリの力を借りてみたり、と様々な工夫をしている。

料理あるあるとして、レパートリーが決まりがちになっていくことがある。自分の悩みでもあり課題としている点でもあるが、浮かばないときこそ新しいものにチャレンジする機会として捉えるようにしている。

女性が料理をすることは、当たり前だとか、花嫁修業だとか、いろいろな見方や捉えようがあると思う。しかし、私のように、どれにも当てはまらず、自分が純粋に料理を楽しんでいるだけという人もいるだろう。

自分の中の密かな楽しみとして、隠していることではないけれど、大きな声で言うことでもない、そんなこだわりが存在する。
私にとってそれは、職場に持っていくお弁当を作り続けることである。

今ちょうど、メニューがありきたりになっている時期。
季節が変わっていくと、自ずと旬の野菜も変わっていき、考え方も、食卓に並ぶメニューも変わってくるはずだ。春夏秋冬ある季節のなかで、今、自分が思いつくメニューを全部試していこう。季節と旬も愛しながら、これからも、こだわりだらけのマイルールを続けていこうと決めている。