「趣味は何ですか?」
この質問は定番の質問だが、私はたいてい「読書と料理です」と答える。無難なので変な人だと思われないし、「どんな本を読むの?」「どんな料理作るの?」というふうに会話が広がりやすい。同じ趣味の人も多いので盛り上がる。読書と料理は私の人格をかなり形成しているので、私のことをわかってもらえるという利点もある。

だけど、私にはもう一つ、隠している趣味がある。匿名のエッセイだからなんとか書けるけど、そんな素振りは一回も見せたことがないし、親友にも、二度と会わないような人にも言ったことがない、重大機密の趣味。それが何かというと、セックスだ。

◎          ◎

共学の学校出身だからか、私たちは性にまつわる話を一切しなかった。なにも知らないふり、わからないふりをしてきた。性にまつわる話=下ネタ、下品。一部の男子がする露悪的なもの。それが共通認識で、性的な話はタブー中のタブーだった。

「趣味は何ですか?」
「そうですねー、セックスですね!!」
そんなことを言ったあかつきには、私が関わる人たちの空気はピッキーーーンと凍るだろう。
私も相手からそんなことを言われたら「あぁ……そうなんですね…」で会話終了させてしまう。

そんなわけで、私は周りから一切、性的なことが好きそうと思われていないのだけど、実はすごく好きだ。私が初めてセックスを経験したのは大学一年の時だったけど、ほんとに念願の出来事だった。高校生までは周囲の誰も経験してなくて、そんな中で誰でもいいからしてみたいとすら思ってた時期もあったな……。大学生になって、行動範囲も広がって、とっても大好きな人と悪戦苦闘してやっとのことでやり遂げた。

お互い初めてだったのでよく分からず、緊張もあって、正直に言うと気持ちよくはなかった。裸を見せるのがすごく恥ずかしいし、自分が臭くないのか気になって集中できなかった。

◎          ◎

そんな出発点だったが、それから私たちはいろんな冒険をしてきた。私たちはふたりともセックスが好きだね、という合意が取れてから、ありとあらゆることを試してきた。
どうしたら相手をもっと幸せにできるのか、どうしたらもっと自分が幸せになれるのか。セックスを通じて相手を知り、自分を知った。

そういえばハリウッドへ旅行したときは、ユニバーサルスタジオに行かずセックストイのお店で五万円散財した。店員さん同士がふざけてムチで叩き合ってたのにはつい笑ってしまった。性的なものが、ゾーニングはしっかりされつつ、オープンすぎて気持ちいい。

◎          ◎

私がセックスの何が好きかというと、もちろんエクシタシーを得られることだ。これ以上幸福感を得られるものを私は知らない。
ただ、それだけではなくて、しっかりと抱きしめてもらえることがすごく好きだ。裸のままで、体温をお互い確かめあえることが好きだ。相手のことだけを考えて、相手に私のことだけを考えてもらえる時間が好きだ。

この気持ちは決して下品とか、汚いものではないと思う。多分今後も誰にも言わないけど、私はセックスが好きだ。そしてそんな自分が好きだ。