人は時間の流れと共に変わっていくことが自然なことであり、時には変わってゆくことが美しさとなることもある。
これは10数年前、出会い系に走ってしまった元親友を巡るエピソード。

真面目でおとなしかった元親友。中学の卒業が分岐点だった

元親友は、小学生から中学卒業までの同級生。
兄弟ぐるみで遊んだり、同じ部活に所属していたりと学生時代の多くの期間を共に過ごした。
彼女はとても真面目で、クラスでは大人しい方。将来は弁護士になることが夢。
元親友は家庭が複雑だったためか、精神的に数少ない友人に依存する性格だった。

その「依存」相手となっていたのがわたし。
当時は全く気がつかなかったが、「元」親友となってから客観的に思えば、そう表現することが適切だと思う。

中学を卒業する頃、わたしは同級生と付き合い始めた。
親友に報告すると、自分のことのように喜んでくれた。
今思い返せば、ここが運命の分岐点だったのかも知れない。
そしてわたしたちは別々の高校に進学した。
新しい生活、友達、部活のこと。
SNSなどで頻繁に連絡をとっており、彼女とは前と同じ心の距離だと思っていた。

不特定多数の男性たちに依存するようになっていた彼女

夏休みになり、久しぶりに地元で彼女と会った。
待ち合わせ場所の駅で、電車を降りて改札から出てきた彼女は、今まで見たことのないようなミニスカート姿で登場。
わたしの知る中学までの彼女は、ボーイッシュなパンツ姿だったので、とても驚いたことを今でも鮮明に覚えている。
「高校生になったし、おしゃれに目覚めたのかな」と前向きな印象を持ったが、近況を聞くとどうやらそうではなさそうなことが判明した。
「今日ね、さっきまで男の子と会ってたんだ」
「出会い系で知り合って、初めて会ってホテルに行ってわたしが支払いもしたの」
と、自慢げに話してきたのだ。

どうやら他にも数人と会い、体の関係を持ったらしい。
もう訳がわからず、混乱したわたしはその後何を話したのかは全く覚えていない。
中学までは出会い系どころか、デートもしたことがないはずの元親友。
今、目の前に居るはずなのに、わたしの知っている元親友は、もうどこにもいなかった。
わたしと離れて、彼女の依存先は不特定多数の男性たちになったのだ。

その日、やんわりと出会い系をやめるよう彼女に話したが、まるで聞く耳を持たないどころか男性経験の多さをマウントするような素振りも見られたため、失望したわたしは彼女と距離を置くことにした。
彼女はわたしとの関係を続けていきたいと思っていたため、SNSでのリプやメール、クリスマスに多くの不在着信を入れてくることもあった。
これらの行動は1年ほどは続いたと記憶している。

ある日、街ですれ違った。それから3~4年経ったある日。人が多く行き交うターミナル駅で彼女と思いがけない再会をした。
偶然すれ違った彼女は、昔はひとつにしばっていた髪の毛を下ろしたカールヘア。
わたしに気がついていない様子だったが、その横顔はどこか現状に満足していない雰囲気があった。
わたしたちは、別の時を歩み、もう元には戻れない。

忘れたくても、定期的に夢に現れ続ける彼女

「もう縁を切ったのだから、早く彼女のことを忘れたい」と、あの日からずっと思ってきた。
しかし現実はそう上手くはいかない。
彼女は定期的にわたしの夢に現れるのだ。
その世界では、たいてい昔に戻って友人として過ごしている。
その度、本当に早くわたしの目の前から消えて欲しいと願ったが、現実となることはない。

これは、彼女の問題であり、友人であったわたしには何もしてあげられることはなかったかも知れないが、それでも割り切れない何かがずっと消えないのである。
彼女が出会い系に染まってしまう前に、助けてあげられたかも知れない。
わたしの心の奥底にはずっとその思いがこびりついている。

そして忘れた頃に夢に……また夢に……。
結果的に10数年が経過していたのである。
つい最近になり、夢に出てきてしまうのならそれは仕方ないと思えるようになった。
実際、数年単位で彼女が出てくる頻度は減っている。
この10数年をあと何回か繰り返してゆくうちに、気がついたら忘れているかも知れないし、今まで通り夢に出てくるかも知れない。
打ち寄せる波が長い年月をかけて砂浜や岩の形を変えるように、わたしも身を委ねよう。
きっと、それでいいのだ。