「友達になろう」
小さい頃は、当たり前のように言っていた言葉だった。

小学校3年生の時、当時1番仲が良かった友達が転校することになった。とても悲しかったのを今でも覚えている。入れ替わりで転校生が来ることは、担任の先生から聞いていた。

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4年生に上がると同時に転校生と会った。第一印象は「静かなお嬢様」だった。私はすぐさま駆け寄って、「友達になろう」と声をかけた。
初めて会ったのに、初日ですぐ打ち解けた。家も近く、一緒に下校して遊びにも行った。

仲良くなるほど中身を知って、沢山笑って優しくて、ちょっとおっちょこちょいだけど負けず嫌いで、運動神経が良くて頑張り屋さんな一面を発見した。
もっと仲良くなりたいと思い、私が所属していたブラスバンド部に誘った。すぐに入部が決まり、私たちの吹奏楽漬けの人生が始まった。

小学校の頃は、町内会が同じだった為、子供会の行事から学校生活、クラブ活動、日曜日の休みは遊んで四六時中一緒に過ごした。
中学に入学してから、それぞれ仲の良い友達ができて一緒に過ごす時間が減ったけど、仲の良さは変わらなかった。
中学3年生では、お互いトップパートでひな壇の1番上でスポットライトに照らされながら終える夏の大会は格別だった。

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高校進学はみんな、将来の目指す道への第一歩として学校を選ぶ人もいれば、学業に専念したい人もいれば、部活に専念したい人もいてバラバラになった。
私は、吹奏楽が大好きだったので、部活動推薦を頂いた地元の吹奏楽強豪校でもある私立高校に進学することを決めた。偶然にもその子も一緒だった。

高校では、新しい友達が増えた為、一緒に過ごす時間は減ったけど、通学は待ち合わせをして行っていた。
吹奏楽強豪校なだけあって夏の大会はオーディションで出場メンバーが選ばれるので、練習内容も変わってくるが、パートは別でも切磋琢磨して日々過ごしていた。

そんな私たちの吹奏楽人生最後の年、高校3年生の大会で演奏する自由曲にその子のソロがあった。最後の年は絶対隣で演奏したいと願いオーディションに臨んだ結果、見事お互いトップパートを勝ち取った。

来る日も来る日も、パート部屋からはその子が何度もソロパートを練習する音が聞こえてきた。合奏では失敗することもあったが、成功すると私まで嬉しかった。
一緒に過ごした吹奏楽人生の8年間は、何にも変えることのできないかけがえのない時間になった。

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高校を卒業してそれぞれの道に進んで会う時間がなかったけど、お互い社会人になって余裕ができた今、一緒にカフェに出かけたり、お互いの彼氏と一緒に夏はバーベキューをしたり、冬はスノーボードに行ったりしている。

今でもこんな関係が続くなんて思ってもいなかったし、あの時声をかけていなかったらただのクラスメイトだったのだと思う。
私は人見知りな性格で、初対面の人に声をかけることが苦手なのに、当時何かビビッと来たものがあったのかもしれない。
あの時声をかけたから、思い出の8年間があり、今があるのだと思うと勇気を出して良かったと思う。

12年前の私、ありがとう。