季節は夏の終り、日差しのポカポカと少し肌寒い風が開けた窓から入ってくる。
こんな日は昼寝をするのも休息としてはありなのだが、その日は無性に動きたくて仕方がなかった。私は今住んでいる田舎から、都会である仙台ヘ出かけることにした。

家族に出かけることを告げ、支度をして家を出た。家の近くにある高速バスに乗る前に、自動販売機で飲み物を買う。というのも、最近はバスの運転手さんも降りる際、両替を求めると少し怪訝そうな顔を浮かべることも多いので、両替ついでに飲み物を買うのだ。

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バスに乗ると、仙台の病院に行く人や仕事、学校へ行く人、そして私と同じく遊びに行く人も多く乗ってきた。バスに揺られウトウトしながら、景色を眺める。電車でもいいのだが、このバスの中の静けさが私にはすごく心地良い。

駅前に着き、バスを降りた。生温い空気から冷たい空気に包まれて少しブルっと震えた。
相変わらず人が多い。修学旅行で東京に行ったときに見た人の数と比べたら少ないが、私の住んでいる田舎と比べたら、それなりに多い。

私がいつも真っ先に向かったのはアニメショップ。私は所謂オタクという奴で、仙台に来ると毎回寄ってはお金が飛んでゆく。色々物色・買い物をしたあとは、本屋を2軒巡る。本屋によっては特集しているものも、店員がおすすめしている本も違うので、毎回新鮮な気持ちになる。

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そしてここからが私の主な目的、ランチである。
実は数年前から一人ランチが好きになってしまった。理由としては『一人になりたい』というのと、『将来一人暮らししたときに寂しさが生まれないように』というもの。
しかしその時、私は入る店が決まらないでいた。時間は12時を過ぎ、13時を過ぎ、ついには14時になってしまった。アーケードやらを色々と回ったが、結局入る気にはなれず私は途方に暮れていた。

そんなとき目に入ったのは、アーケードにあるパン屋。中を覗くとどうやら店内で飲食可能なようだった。空腹も限界にきていたため、私は店内に入った。

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中はパン屋らしい香ばしい匂いが漂っていた。パンは主に惣菜パンをメインとしており、中にはキッシュやクッキーなどのお菓子も並んでいた。私はウロウロと悩み続けたが、食べたことのなかったキノコのキッシュ、当時としては珍しい焼きカレーパン、洋梨の入ったパイを選んだ。今思えば少し多かったが、後悔はしていない。

店員さんに店内での飲食を希望すると、「お飲み物お選びいただきます」と言われメニューを見せられた。カフェオレやオレンジジュースがあったが、私はコーンスープを選んだ。
「パンは温めますので、札をお持ちになってお席でお待ち下さい、お飲み物も一緒にお持ちいたします」
私は端の席に座った。店内を見ると散歩途中であろうおじさんやママ友たちのお茶会などが開かれ、少し賑やかだった。

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「お待たせいたしました」
店員さんがパンとコーンスープを持ってきてくれた。感想は、すごく美味しかった。キッシュも初めて食べたが、塩気のある卵が私には珍しく驚きだった。焼きカレーパンも新しい発見で、洋梨のパイも甘すぎなかった。食べ終わり、ふぅとため息をこぼすと、「また来たいな」という気になった。

その後、私はまた高速バスで自宅に帰った。家族にあのパン屋の話を嬉しく話した。今も仙台に行くと、必ずあのパン屋に寄る。
これはわたしのとある休日の話である。