浮気やワンナイトはしたことない。
これは、わたしが友達に言っていたことだ。
そして、ずっとつき続けている嘘だ。
◎ ◎
初カレは大学生になってからで、それからも色々なタイプと付き合ってきた。
スポーツマン、チャラ男、ガリ勉、外国人、ネチネチ男、一途すぎる男、バツイチ……。
割と1人の時間がなくて、別れたら好きな人をつくり、切り替えは早い方だった。
そんな私に友達は、ワンナイトや浮気をしたことがないかよく尋ねてきた。
付き合ったらしっかり向き合うタイプだったので、浮気はしたことがなかった。
ただ、ワンナイトは別。したことがある。
でも、当時のわたしはワンナイトや浮気は軽蔑されるべき行為だと強く思っていたため、「ワンナイトや浮気はしたことがない」と嘘を貫き通していた。
ワンナイトをしたその人は彼女持ちの人。
友達の紹介で何回か飲んだことがある。
肌がきれいでかっこ良くて、世の中の汚い部分も知っているかのような、余裕を感じる男性だった。
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友達と3人で飲んだあと、友達はあとから合流するという程で先に彼と二次会を始めることになった。
タクシーで移動しようといった彼を信じた私も私だが、ついたのは彼の家。
わたしはどきっとした。
こういうとき、どうすればいいんだろう、え、帰りますってかえっていいのかな。でも考え過ぎで何もないかもしれない。あとから友達も来るし。と、純粋すぎるくらいの思考を通し終わったときにはすでに、彼の家に上がっていた。
「なにのむー?」と彼。
同棲していたと聞いていたので、「彼女は?」と聞くと、「あ、今一緒に住んでないんだよねー。付き合ってはいるけど」と、突っ込みたくなるような内容が返ってきた。
とりあえず缶のサワーで乾杯して、他愛もない話をしたあとに、ベッドにいた彼が手招きをしてきた。
わたしは、「いやいや、だめでしょ」と言いながら、何度も誘ってくる彼の誘惑に負けてほろよい状態で彼のいるベッドに近づいた。
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彼にハグされた後に、キスをしそうな雰囲気になったとき、彼女がいるということに対する罪悪感と、単純にこの人とキスしたいという気持ちが入り混じったもやもやとした、でも高揚したような名付けにくい気持ちが押し寄せてきた。
「ねえ、だめだよ」と言いつつも、その時抵抗はしていなかったと思う。キスをしてそのままの流れで彼と寝てしまった。
朝、起きたあとも平然と「ご飯食べる?」と言ってくる彼を見て、この生き物は何なんだろう、私達はどういう関係なんだろうと不思議に思いながらも、ボーッとしたまま朝ごはんを食べて帰宅した。
その後も連絡は続き、たまに会ってご飯をたべて遊んで飲んでは彼と寝た。
これが世間で言うセフレなのか、などと自分の状態を客観視しながらも、彼と会っている時間は楽しくて心地よくて、やめられなかった。
でも不思議と独占欲はなく、たまたまカフェで彼の彼女に会ったときも敵対心は全く芽生えなかった。
彼に対しても彼女との時間は優先するべきだと思っていたし、私からしつこく連絡することもなかった。今考えたら、私は相当都合のいい女だったと思う。
◎ ◎
そんな中、わたしに彼を、紹介してくれた友人が突然、心臓発作を起こして亡くなってしまった。
そして、その連絡をくれたのは彼だった。
訃報を聞いた衝撃とともに、彼との関係を終わらせなくてはいけない、という考えが頭に浮かんだ。
友人の死とは関係性がないとわかっていても、自分の悪事が友人の死に影響しているような気がしてならなかった。
それ以来、彼とは連絡も取っていないし、会ってもいない。
その経験を経てから、私の中に新しい価値観が仲間入りした。
好きな人とヤッて何が悪いの?その時会いたい人、好きな人にそれを伝えてることがどうしてだめなの?と考えるようになった。
それによって、相手に対しても、自分との関係性に影響がなければ干渉しないというスタイルを貫くようになった。
これがいいのか悪いのかはわからないし、浮気やワンナイトが悪いことだとか、仕方がないことだとか決めるつもりもない。
ただ、わたしは浮気やワンナイトの経験があるか聞かれたら答えるだろう。
一回もない、と。