初めて「好きだ」と告白されたのは小学6年生だった。
4年生の時に転校してきたのだと思うが、成長期が早く、ひときわ身長が高く目立つ事が好きだが少し恥ずかしがり屋でもある男の子だった。

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5年生の時、校外学習の帰り道、男子3人女子3人の私たちのグループは最後尾なのをいい事に遊びながら歩いていた。

1クラス36人ほどの4クラスの1番後ろを少し離れていたので、我らは『孤独組』と名付けてふざけて遊んでいた。すぐ前のグループも加わって、クラスの半分くらいが『孤独組』になっていた。思春期の始まり頃だったが、いつもなら話さない子とも話せるような雰囲気で教室の中とは違っていた。その中にその子がいた。

その後の行事のグループで、またその子と一緒になった。クラスの中でのおちゃらけたキャラとは違って繊細で優しい子だなとその時感じた。私の気持ちはだんだん気になる相手から好きなのかもしれないと変化していった。

6年生になると別のクラスになった。下の学年がクラスが増えた関係で教室の階数も別になり、廊下ですれ違う事もほとんどなかった。
その頃、私は姉のお下がりのおまじないの本に載っていた両思いになるお守りを作り、ずっと持ち歩いていた。

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春の遠足の翌日、その子のクラスのお調子者が私に向かって「〇〇の好きな人だ!」。それが私が好きだった子だったので、初めは私の好きな人がバレてしまったのかとパニックだった。
おまじないのお守りは私がしっかり持っているし、誰にも好きだと言っていなかった。
両思いだったのだ。友人の手助けもあって、私の気持ちを伝える事が出来た。

普段の学校の日は、冷やかしやいじられたりするのでなかなか話せなかった。地元のお祭りに友人も含めて一緒に行ったり、校内でこっそりプレゼントをもらったりして楽しかった。

だが、卒業が少しずつ迫っているとき、彼は私立の中学に進学する事が分かった。平凡な家で育った私には中学受験なんて考えもしなかった。勝手に同じ中学に行けると思っていた。お互いでなんだかどう接したら良いか分からず、ほとんど話さないまま卒業した。

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中学に通うようになり、彼の事はほとんど気にせず過ごしていた。
年明け、年賀状が彼から届いて驚いた。その次の年も受け取った。返事を書いたがそれきりで、成人式の日に見かけたが声がかけられなかった。両思いであっても、行動しないとどうにもならないなと感じた。

彼とは置かれている環境が違っていて勉強が出来て、私はなんとなく過ごしているだけで差を感じていた。中学生の頃の年賀状も嬉しかったけれど、“私なんか”と距離を置いてしまったのだと思う。

今の私が思うと、追い付きたかったら勉強すれば良かった、連絡を取る方法はいくらでもあった。あの頃、もっと話がしてみたかった。

『今度にしよう』『話さなくてもいいや』はもったいなくて、話せる相手が近くにいるうちにと“今”を大切にすることを学ばせてくれたと思う。
夫がなんとなくその彼に似ているのは、多分やっぱり好きだったんだと思う。