元カレは年上の方ばかりだ。自分も若かったくせに、1歳でも年下の男性を見ると、若いな〜なんて思っていた。
高校生のとき、大学生の彼が体育祭に来てくれたり、大学生のときの社会人の彼がかっこいい車に乗って迎えにきてくれたり。それがちょっと、わたしを鼻高々な気分にしてくれた。

そんな価値観が20代後半になり、急に変わった。
不思議なくらい急に、年下の子たちがかわいく、そしてかっこよく見えてきたのだ。
わたし自身、もう年を取りたくない、大人っぽいと言われるよりも若く見られる方が嬉しいと、意識が変わってきたということもある。

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友達数人で飲んでいたときに知り合った男の子。6歳も年下だった。
なんとなく連絡先を交換して、気付けば毎日連絡を取るようになった。
おはよう、とか。今日はなにしてるの、とか。本当に他愛もない内容や、はやく会いたいね、なんて会話も。
いま考えたら少しだけ両思いの期間があったのかもしれない。
でも当時のわたしは、若い子はきっとこれが普通なんだ、わたしの世代よりも男女の友情が成立する世代なんだ、と彼の気持ちを確かめようとはしなかった。

だんだんと連絡頻度が減っていく。なぜか毎日、おはよう、だけを送り合う。
なんで毎日連絡を取り合っているんだろう?とりあえず知り合いみんなに送るタイプなのかな?
きっとわたしだけじゃなく、その他大勢にも同じように連絡を取っているんだろう、と思うようになっていた。
そのまま連絡頻度は減り続け、いつの間にか連絡を取らなくなっていた。

自分が“その他大勢”になったときに気付くのだ。
特別じゃなければ毎日連絡なんてしないよな。はやく会いたいなんて言わないよな。
でも今更また毎日連絡する関係性には戻れない。だって、彼にとって今のわたしは、“その他大勢”なのだから。
“その他大勢”になってしまった原因は、わたしの自信のなさも関係している。

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まさか自分のことを好きなはずがない。そもそも恋愛対象にみられているのかもわからない。友達だと思って連絡していたのに勝手に好きになられたら困るのではないか。若い子の当たり前の距離感を理解できていなかったとしたら恥ずかしい。
そんな気持ちから、距離を縮めることを避けていたのはわたしの方だったかもしれない。

そういえばわたしは、ありがたいことに好きだと言ってくれる人と、それなりに一緒に過ごすという恋愛しかしたことがなかった。
遠距離恋愛や半同棲、その他もろもろ、それなりに経験してきた。失恋して激痩せしたことだってある。だから、人並みに恋愛経験はある方だと思っていた。
でも、「この人は何を考えているんだろう」と思いを巡らせたり、「もしかして両思いかもしれない」と期待を膨らませたり、そんな片思いの瞬間をわたしは経験せずに生きてしまっていた。
だから、いざ気になる人が現れたとき、これが恋だと気付けなかったのだ。

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あのときわたしが、若い子の距離感はこんなもんだと思い込まなければ、毎日連絡を取り合えることを素直に嬉しいと感じられていたら、関係性は変わっていたのかもしれない。
世代が違うともちろん異性に対する接し方は変わってくるだろうが、好きな人と毎日連絡を取りたい、はやく会いたい、と思うのはやっぱり世代なんて関係ないのだと思う。

この学びを活かすことができるかどうかは、次に恋をしたときに確かめることにする。