かがみよかがみに投稿した記事(「就職活動に怯えたあたしは、内定欲しさに自分らしさを見失った」)が採用されて数ヶ月経つ。あれから、自分の未来を考え直す日々が始まった。

初めは手当たり次第に助けを求めた。
大学の教授、友達、SNS上の友人、一方的にフォローしている方。みんな誰もが「選択肢はいくらでもあるよ」「一旦休んで」と、遠い未来のことを想像して絶望している私に声をかけてくれた。
「とりあえず今が良かったらそれでいいやん。その先のことはどうなるか分からんのんやし」

◎          ◎

8月29日。2ヶ月ぶりに再会した親友は、あたしが食べ物を口にしていないことだけを心配していた。あたしの未来に関しては、他人だから当たり前だが、どうにでもなるよといつもの調子で微笑んでくれた。
体重が10kg落ちて、ろくに思考することが出来なくなっていたあたしは「それは貴方だから言えるんだよ」とまたないものねだりをしたけど、友達と普段通り話して、その後初めて東京ドームに行って、好きなアイドルを見たら就職のことなんか忘れ去っていた。

「この世にありがとうって言いたい……」
みたいなことを永遠に言っていた気がする。
東京ドームの扉が回転式だったので、ウ・ヨンウ弁護士のワルツのシーンを再現した。
「マジでよかった〜。アイドルありがとう……」
「あたし、明日も休みやけどどっか行く?」
「え、鎌倉か横浜がいい」
「オッケー。また明日連絡するわ」
赤坂見附のホテルに戻って、その日のライブを反芻して、幸せだなあとぼんやり思った。

◎          ◎

その前の週までは、自分人生の終わりを考えたこともあった。結局出来なくて、メンタルクリニックに行ったけど失敗で。
「今は就活のこと忘れたら?」
一緒に来ていた妹がそう言って、コンビニで買ってきたアイスを食べていた。
「とりあえず目の前のことだけ考えな」
就職先が、その土地が、あたしを永遠に縛り付けてしまうと。呪いにかかったかのように、毎晩呪われているかのように泣いていた。
そんな日々が嘘だったように3日程で少し回復したあたしだが、先週またどん底に落ちた。
内定式である。

諸々のことを考えて、今から就活しても自分の納得する結果が得られなさそうだと悟ったあたしは、とりあえず貯金することに決めた。のだが、ほんの少し母親と話したことがトリガーになって、内定式の雰囲気に飲み込まれて、内定者課題で頭がいっぱいになって、また、毎晩、いや毎朝泣き始めた。
あんなに病み散らかしていた8月に休まなかったバイトも休んだ。もうどうにでもなれと思った。
その次の日、なんとか行ったバイト先に、フリーターとして上京したという1個上の女性が現れた。羨ましくて堪らなかったけど、あたしはそこまでして手に入れたい職がある訳でもなかった。あたしは、ただ、幸せでいたいだけだった。

◎          ◎

また家で泣いた。
同居している妹を困らせたくなくて、風呂場で泣いた。声を出して泣いていたから、聞こえていたかもしれない。つらくて、つらくて、どうしようもなくて、眠りについて、朝目覚めてまた泣く。
パソコンで卒論をうちながら、ポタポタ泣く。
昔は泣いたら負けだと思っていたから、苦しいことがあっても絶対に泣いたりしなかった。
頑固で、我慢強くて、それがいいことだと思っていた小さな頃のあたし。もっとワガママでいいよ。
ワガママの言い方が分からないから、したいことも分からない。とにかく幸せになりたい。
あたしは今年から数年、とんでもなくいい運に恵まれているらしい。ゲッターズ飯田が「せっかくいい運なんだから、マイナスな妄想ばかりするな」と占っていて、占い師ってエスパーなのかと思った。

まだ、あたしの人生は終わっていない。
とりあえず卒論を書いて、資格をとって、友達に会って、会いたい人に会いに行って、お金を貯めて、好きな人たちがいる場所へ移り住もうと思う。
人生の大きな転換期だと評されて、気持ちが大きく沈んでしまうけど、これは始まりに過ぎないのだ。
決して、終わりではないのだ。