大学3年生。卒業までに1年以上も残っているのに、慣れないリクルートスーツに身を包み、会社に、合同説明会に足を運ぶ。
自己分析をして、何枚もエントリーシートを書いて、何社も面接を受けて、それでもめげずにまた次を考える。

そりゃ、自分を見失うのも無理はない。徐々に内定がもらえた仲間が増え始め、焦っていき、自分も内定をもらうことにこだわっていく。どんな職種でも、とりあえず内定がほしい、と。

大学を卒業して社会人となったが、「思い描いていた働き方」と違った

私の場合は、国家資格を持つ専門職で、人手不足が長年謳われてきた業界。そのため、1社か2社受ければ内定をもらえた。
就職活動としてはごく短期間で、一瞬で終わる。大学4年生の春にエントリーすれば、初夏には内定をもらっており、卒論と国家試験の勉強に勤しんだ。
そう考えると、周りの友達は、企業から内定をもらうべく何社も面接を受けている最中に卒論も仕上げることをしていたのだから、「すごい」の一言だ。

無事に大学を卒業し、社会人となり、内定をもらった企業で働く。自分で選んで試験を受けて、内定をもらって、インターンとして働いて仕事のことは理解できたつもりだった。
しかし、思い描いていた働き方との乖離が起きて、いつの日か、辞めたいと思うようになる。「これでいいのか」と自問自答しながら、「それでも新入社員だから、まだ何も知らないだけだから」と自分を律し、奮い立たせて仕事に励む。
そうすれば、次第に心が疲れていった。会社に還元しようなんて気持ちはどこかへ行った。今日1日、自分が働いて家に帰るだけで必死だった。

自分の気持ちや傾向を振り返り、本当はどうしたいのかを自問自答した

持っている国家資格を使って働くのは良いが、私はそこにやりがいを感じられなかった。そして辞めたいと思った。
働いていながら、自分の気持ちや傾向を振り返って、本当はどうしたいのかを自問自答した。未だに明確な答えは出ていない。だが、少なくとも、今ここにとどまることだけは違うということが共通しているのだとわかった。

ふと思った。ちょっと待てよ? これこそ、就職活動のときにすべき自己分析で、自分の行きたい分野を選ぶことなんじゃないか?
これを学生のときにできていたら、教えられていたら、気づけていたら、何も疑問に思うことなく、仕事が好きだと言えていただろうか。多くの人が人生の岐路に立ったとき、迷わず答えを出せただろうか? 働き方に疑問を覚えることなく、理想との乖離がない社会人になれていただろうか?

私は社会人となり、自分のあり方や納得できる働き方を考えるように

就活。就職活動。大学生のほんの一瞬で、残りの人生の大まかな方針を決める。良くも悪くも、この期間が「働く」ことの基盤になる。
私は、社会人となり、「働く」ことを知り、ようやく自分のあり方や納得できる働き方を考えるようになった。そこで、自己分析で、潜在的な自分を見つけることが重要なのだと気づいた。
アルバイトでしか社会を知らなかった当時の私に、ここまで深く自分を考えることはできなかったけれど、働いたからこそ、就活は自分と正面から向き合う事が必要なのだとわかった。

学生時代の就活は、道端の石ころを蹴飛ばした瞬間のようなもの。それが長くまっすぐに転がっていくこともあれば、知らない人の家の敷地に転がっていったり、道端の川に消えていったりする。新しい石ころは、また道端から持ってくる。私は、これでいいと思う。
自分の納得できる場所を見つけるのに、限られた時間と身を削る思いまでしなくてもいいと思う。その時のタイミングで、やりたいこと、興味のあることを探していけば。そして考えが変わったら、また探せばいい。

どうか、自分を見失わないように。