久々の外出だから秋服を着て、メイクをして、張り切ってヘアアレンジもした。ふんわり巻いた前髪が揺れる。まあ、ただ大学に授業を受けに行くだけなのだが、それでも台風明けの久々の外出でワクワクした。
といっても今日の授業は午前中に一コマあるだけで、その後は特に予定もない。まっすぐ家に帰って、お昼寝でもしようか。いやいや、それでは朝から1時間かけてお洒落した努力がもったいない。どこかで遊んでから帰ろうか。せっかく京都の大学に通っているわけだし、久々に観光でもしよう。色々、考えを巡らせるうちに大学に着いた。
意気揚々と教室の扉を開けるも、誰もおらず。ましてや、明かりすらついていなかった。

◎          ◎

「あれ、教室間違えた?」
この時点で授業開始まであと5分。まさかこれは教室を勘違いして遅刻するパターンか…。だんだん不安になってくる。
「いったんメールしよ。えっと、法哲学の教室はE棟、401号室で合っていますでしょうか、と。送信!!」
数分後、携帯から響いた通知音。すぐさまメールの受信フォルダを確認する。
「連絡ありがとう。本日ですが、学会のため授業はお休みです。昨日メールしましたが、届いていなかったかな?ちなみに教室はあっていますよ」
はて、昨日のメールとは。おもむろに携帯の画面をスクロールする。
「あ、届いてるわ。え、待てよ。ということは私、今日授業無い??」
まさかの事実に思わず目をぱちくり。
とはいえ、思いがけず舞い込んだ休日。このまま帰宅も惜しいし、何だかお腹もすいてきた。とりあえずグーグルで「京都 ランチ 観光」と検索。数分後、目に留まった写真。映っているのは、一切れのクレープ。生地の上にフルーツが、宝石みたいに散りばめられている。
「え、何これ美味しそう」
どうやら、蹴上駅近くのクレープ屋さんで食べられるらしい。行くしかない。リュックサックをひっつかんで、教室を出る。

◎          ◎

まずは大学から歩いて京阪七条駅へ。そこから電車で蹴上駅まで向かい、徒歩15分で到着だ。
蹴上駅に到着し、グーグルマップを起動する。道が入り組んでいたため少々苦労したが、何とかお店に到着。扉を開けると、店主らしき女性が優しく迎えてくれた。
席につき、メニュー表を開いて、午前中に見たクレープのメニューを探す。
「あった。これや。朝に食べたいと思ってたやつ」
お目当てのものが見つかり思わず笑みが浮かぶ。ふと視線を移すと「季節のおすすめクレープ」の文字。「天使海老」なるものをふんだんに使っているらしい。
う~む、すっごく気になる。先ほど見つけたメニューとこれ、両方注文してしまおう。数分後、テーブルに並んだクレープ。海老が輝いてみえる。思わず写真を撮った。
一切れ口に運べば、ぷりっとした海老の弾力が。思わず目を見開く。
「ん~!!うんまっ」
天使海老のクレープを完食してからすぐに、フルーツのクレープが運ばれてきた。こちらもしっかり写真を撮る。
口に運べば、キャラメリゼされたフルーツの味が。
「うん、幸せ」

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お店を出て、蹴上駅まで戻る。その途中で見つけた標識。
「無鄰菴(むりんあん)?」
京都の観光名所だろうか。気になったので、グーグルで検索。「なるほど。閑静な日本庭園、伝統的な別荘か。なんだか優雅な響き。お金持ちの気分になれそう」ということで、標識に従って無鄰菴に向かう。
到着し、チケットを購入して中へ。母屋の縁側に座る。平日でほとんど人もおらず、一番前の特等席を確保できた。

いい眺めだ。ほんのり色づいた紅葉に、悠々とそびえる山。川のせせらぎに耳を澄ませる。静かだ。こうしていると、この景色全てが自分のものになったような気分になる。

優雅なひと時。都会の喧騒も、忙しさも全ていったん忘れて。こうして庭を眺める大切な時間。私の人生に不可欠な時間。
思いがけない休日だったが、総じて幸せな日々だった。明日も元気に生きていこう。