水曜日の朝、目が覚める。カーテンの外が、いつもより明るい。しかも、平日なのにやけに静かだ。寝坊したかしら。
いやいや、今日わたしはお休みなのだ。そう思い出しただけで、お得な気分になる。のんびりしよう。

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ほっとしたら、お腹がすいた。何か食べよう。
1階の台所に行くと、お弁当の包みがテーブルに置かれていた。きっと、わたしがいつ起きても困らないようにと、母が作ってくれたのだ。
「いただきます」
梅干しの乗った玄米ごはん、だし巻き卵にブロッコリー、それから、さばの味噌煮。もぐもぐしながら、やりたいことを思い浮かべる。
好きなコンサートの映像を観ようかしら。しかし、膝も腰も痛くて、歩くのもやっとなのだ。DVDを引っ張り出してくるのも、テレビをつけるのも、億劫だ。やめよう。それに、何度も観ているものなので、やろうと思えば妄想で再生だってできる。それだけで、十分楽しい。
気を取り直して、文章を書こうかしら。ただ、頭がぼーっとしている。頑張っても、考え事はできそうにない。
よし、眠ろう。結局わたしは、連日の立ち仕事で身体も心もボロボロなのだ。何を考えても、最後には面倒になり、眠くなる。この疲れを癒すには、眠るのが一番だ。自分にそう言い聞かせながら、たった今起きてきたばかりのベッドに戻る。
「お休みなんだから」
そう言って、頭から布団をかぶる。この瞬間が、たまらなく幸せだ。あたたかい布団にくるまりながら、腰をさすってみる。自分をいたわる時間も大切だ。
「痛いのね。ゆっくり休もうね」
そんなことを心の中でつぶやくうち、いつの間にかうとうとしている。

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しばらく眠っただろうか。いい気分でふと時計に目をやる。お昼だ。お腹を満たしたいところだが、お弁当は空っぽで、冷蔵庫をのぞいても何もない。
「お茶にしよう」
こんな時は、スイーツに限る。最近ハマっているアールグレイも淹れよう。
家族が買いだめしているチョコをパクパク食べる。低糖質だし、ちょっとぐらい食べ過ぎても、まあいいか。そして、すぐ横に置いてあるお菓子の缶と目が合った。
「何これ、おいしそう」
誘惑に負けた。親戚からもらった高そうなクッキーを2つ食べた。その後も、せんべいを食べ、アーモンドをかじり、気づいたらお腹いっぱいになっていた。
ダメだ、眠い。
「お菓子はごはんではありません」なんてお叱りも聞こえてきそうだが、わたしは限界だ。お昼寝しよう。
ゴロゴロしながら考える。
お休みの日に朝から晩まで動き回っている人って、疲れないのかしら。遊びに勉強に、恋愛に。分刻みに過ごしている知り合いから言わせると、お休みは「どうしてもスケジュールをパンパンに詰めちゃう」ものらしい。
もう、住む世界が違いすぎて、尊敬する。わたしなら、近所のスーパーに買い物に行くだけでも、すぐ息が詰まる。やっぱり、好きなだけ食べて、寝ていられるのは、最高の贅沢だ。

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そんなことを思いつつ、またうとうとして、いつの間にか眠っていたようだ。気づいた時には、夕方の5時。外はすっかり暗くなっていた。
また起きて、ごはんを食べて、お風呂に入って、寝る。そして、朝が来たら、仕事に行かねば。
そう考えると、ただ食べて、寝ていただけの1日が、薄っぺらで、何だかもったいないような気がしてきた。不思議だ。あんなに眠かったのに、今さら、少し反省している。
しかし、仕事から離れるのがお休みの意味なら、動き回るのも、のんびりするのも、正解なのではないか。
「やりたい放題できたのだから、きっと明日も頑張れる」
そうだ。たまには、自分をとことん甘やかす日があってもいい。それが、わたしのお休み。