毎年巡ってくる366日にはいろんな日があると思う。お正月に端午の節句、冬至に体育の日。家族の誕生日や友人の誕生日もある。初めて一人暮らしをした日とか、初めて彼氏ができた日とか、自分が今まで過ごしてきた道のりをカレンダーに落とし込んだら、きっといろいろ書かれるとだと思う。
その中で私にとっての忘れられない一日は、10月23日だ。

この時期は、私の住んでいた地域では学習発表会がよく開催されていたし、大学では学祭をしているところもある。ちょうど涼しくなって文化活動がしやすい時期だと思う。
だからなのだろう、私はこの日に2度、発表会に出た。自分の人生で最後になるだろうと思った1度目とその8年後に、同じ場所で同じ日に。

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幼少の頃から身体が弱くて、やる気も根気もなかった私が唯一続けていたのがクラシックバレエだった。
姉が偶然、やりたいと言い出して始めたバレエの発表会を観に行った時に、私もかわいい衣装が着たいと、私も始めたいと両親に言ったらしい、覚えていないけれど。
初めの動機が不純なので、全くやる気も出さず、初めの数年間はただ発表会の衣装のためだけに通っていた。ところが、小学3年の時に母が買ってくれた白鳥の湖のプロのバレエダンサーの踊りを見た時、ものすごい衝撃を受けた。心の底から上手くなりたいと思った。
それからは真面目にレッスンを受けるようになった。田舎の小さなバレエ教室で、プロのダンサーのように上手くなって、いつかソロを踊りたいと思った。

それから何年か経ち、高校3年の最後だと思った発表会の日が10月23日だった。
とてもよく晴れた暖かい日だったと思う。あの日は何もかもが素晴らしかった。小さい頃から通った小さなバレエ教室だったけれど。ずっと踊りたかった演目の主役を踊った。
スパンコールとラインストーンのついた華やかな衣装に、お姫様しか付けられないキラキラ輝くティアラを付けた自分は、本物のお姫様のようだと思った。
あの日のために受験勉強もそこそこに、とても練習したのを覚えている。そして、本番の踊りも無事に成功して、見にきてくれた人たちがとても褒めてくれた。当時大学入学を機に離れて住んでいた姉も、わざわざ発表会のために帰ってきてくれた。幼少時からずっと一緒に踊ってきた仲間と最後に一緒に踊れてとても嬉しかった。

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それから7年後、仕事を辞めて体調を崩して、実家に戻ってから久しぶりに当時通っていたバレエ教室に行った。先生は少し驚いていたけれど、何も変わらず、私がまた通うことを二つ返事で了承してくれた。
そして、その1年後、私は高校3年の時と同じ日に同じ舞台の上に立った。これも思い出深い演目で、私が初めてもらえたソロの役だった。
あの日も晴れた雲一つない快晴でとても素晴らしい1日だった。8年前と違うのは当時、小さな子供だった子たちが私と一緒に踊る仲間になっていたことで、時間の流れがとても嬉しかった。

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人前に立つのが大の苦手な私が、唯一平気なことが、舞台に立ってスポットライトを浴びて踊ることだ。きっと自分だとわからない厚化粧とキラキラの衣装のおかげなのかもしれない。
プロのダンサーではないから、決して上手くないし、身体の限界を感じたこともあった。けれど、あの踊っている瞬間や仲間と発表会をやり遂げる時間が私は何よりも好きだ。今、この瞬間がかけがえのない瞬間なのだと実感できるのだ。つくづくきっかけをくれた姉と続けさせてくれた両親にとても感謝している。

もう2度と発表会に出ないと思うけれど、あの日の思い出たちが自分の心にあるからこそ、私は今まで生きてこれたと思う。そして、これからも前を向いて生きていける気がする。