今日は10月25日。
今月末でわたしの行きつけのお店が閉店する。猶予あと1週間。
そのお店は、パスタがとても美味しくて、リーズナブルな価格が売りなのにランチもディナーもお得なセットメニューをやっている。
全国にチェーンいうほどではないけれど展開をしていて、わたしの近所のお店が閉店してしまうだけなので、言ってしまえば足を伸ばしてまた食べに行くことができる。
調べてみれば次に近い店舗もそう遠いわけではないようだった。
わたしにはものすごく遠いのだけれど。
◎ ◎
わたしはそのお店の、ボンゴレが好きだ。
メニューが豊富でどれも美味しそうで、パスタでない料理もあるのでいつも悩んでしまう。あれもこれも、食べてみたいものはたくさんあった。でも大体、それはまた次に来た時にしようとボンゴレを頼む。
また次に。
これを安易に信じることの危険さは何度も身をもって知ったはずなのに、またやってしまった。
人間、次があると思ってはいけないのだ。
ある日突然何があってもおかしくない。わたしに、相手に。このコロナ禍ではなおのこと。閉店だってあり得るのだから。
このお店はセカンド最寄りのような駅にある。
そこから出掛ける時の行きや帰りに食事をしたり。
休みの日にご飯とお茶を兼ねてすこしのんびりしに行ったり。
それから休みの日の前日に、仕事帰りに寄ったりした。家をわざわざ通り過ぎて。
◎ ◎
店長さんが何度か変わった。
気が付いたら顔を見なくなっていた学生バイトさんらしき人もたくさんいた。
店舗内の壁を塗り替えたこともあった。
あの可愛いイラストはどうなってしまうんだろう。次のお店が入った時には消されたり、塗り潰されたりしてしまうのだろう。お店のロゴだったのだから。
わたしは自分の働いているお店が閉店してしまう、なんてことの経験がない。
知らされたスタッフはさぞかし驚くことだろう。
新しいバイトや職場探しをどんな気持ちでするのだろうか。
その時の繋がりはどうなってしまうのだろう。例えば店舗のLINEグループだとかは。
自分の働くお店が嫌いな人はあまりいないと思う。
好きであることの方が多いのではないか。
そうしたら、とても悲しいことだろう。
空いたテナントには、きっとすぐ、新しいお店が入る。
わたしが元スタッフなら、そのお店には近付かないかもしれない。
◎ ◎
そのお店のボンゴレは、とにかくシンプルで絶品なのだ。
あの味を知ってしまっては他のボンゴレは今ひとつに思えてしまった。
職場近くのパスタ専門店に行ったり、近いものを探して歩いたこともあったのだ。
パスタは細めのもちもち。
ソースがお塩とガーリック、オリーブオイル以外は入っていないのではと思う潔さ。
これがパスタと非常に相性が良くて、わたしは素麺ならぬ素パスタのように食べてしまう。が、あさりもたくさん乗っている。
思いついた時に、フォークにパスタを巻き、その先にあさりをくっつける。
一緒にいただくと、とても美味しい。
みじん切りガーリックを器用にすくうのもお忘れなく。
忘れてはいけない、このお店のボンゴレレシピはこれからも世界に存在する。
食べられないことはないのだ。
ただ、行ったことのない店舗へ電車を乗り継いで、ボンゴレのために出掛けるかといったら、申し訳ないが少し自信がない。
お気に入り店舗閉店後もなお、コロナ禍なのだ。