2019年7月、住んでいる東海地方から九州へ、夫の運転で新婚旅行に行った。

私も夫も初上陸の九州の地、6日間で佐賀→長崎→熊本→福岡と巡った。九州で食べてみたいものがたくさんあり、ほとんど食事を中心に行き先を決めた。イカ、長崎ちゃんぽん、馬刺しなど旅行中はいつもよりも食事量が増えていたと思う。
その中でも思い入れが深いのは、長崎県島原市の“かんざらし”だ。

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“かんざらし”とは白玉団子に蜂蜜と砂糖などで作った蜜がかかった甘味である。
普通の白玉団子よりも少し小さめで、蜜は優しい甘さで、ほどよく冷たくて喉越しが良い。素朴な味で懐かしさを感じることの出来る食べ物だ。

島原に行った日は雨が強かった。傘をさして駐車場から“銀水”という老舗のお店まで歩いた。
街の中に湧水の洗い場があり、段差を利用して①魚、食料品②食器、食料品のすすぎ③食器、食料品の洗い場④洗濯用、と分られた石造りの物がある。
そのすぐそばにこのお店があり、中に入るとそこにも四つに仕切られた水場がある。カウンターにも作られている。カウンターの水場は、上から①ボールに入った白玉②銀のポットに入れられた蜜③木の蓋がしてある、おそらく小豆④洗い場、になっていた。

外では雨で気がつかなかったが、湧水はとても透き通っていてキレイで、店内のレトロな雰囲気と相まってなんだか感動した。夫と2人で同じ“かんざらし”を注文してカウンターで目の前の水場を眺めながら食べた。

店内には私達の他に1組カップルらしき2人がいたが、静かに外の雨音を聴きながらゆったりとした時間が流れていた。

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1泊2日程の旅行が多く、今回の旅行で初めて6泊7日した。結婚をして一緒に暮らしてはいたが、一度にこんなに長い時間を一緒に過ごしたのは初めてだった。

夫は12時間近くを休憩しながら運転をして、私の行きたかった場所に連れて行ってくれた。元々運転は大好きなので自分からそれを買って出たのだが、当然疲れる。けれど計画通りに進めてくれた。宿に着いて休みたいのも頑張って、私のしたいことに合わせてくれた。

とても優しい夫だ。なのに私は求め過ぎてしまい、この島原に向かう間はなんだか空気が重たかった。島原に着いて“かんざらし”を食べて、それがリセットされたように思う。
私は折角遠くまで来たのだから楽しまないと、と張り切り過ぎてしまっていたようで、ここに来て心から癒されたと思う。自然と夫に求め過ぎる事もなくなって、ちょうど良い楽しみ方を見つけられるきっかけになった。

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その後、熊本に向かい、夕方ホテルに着いたら夫を休憩させるためにひとりで熊本城を散策した。夜、仮眠をとった夫と街へ出てのんびり夕食をとった。
ホテルまでの15分くらいはお互いふざけ合って特に楽しかった。一緒に居なければいけないとどこかで思っていたがそんな事は無く、一緒に居たいから居る感覚を大切にしたいと感じた。

おじいさんおばあさんになったら、また“かんざらし”を一緒に食べに行きたい。その時はどんな気づきがあるだろう。