幼い頃は、サンタさんの存在を信じていた。
そんなわたしがサンタ不信になったお話。

幼い頃のわたしは、サンタさんが大好きだった。
欲しいと思ったものが手に入るのは、1年間に2回。誕生日とクリスマスのみ。
毎年毎年、誕生日とクリスマスは欲しいものをもらえるから大好きな日だった。

小学校に入ってしばらくした頃、親の言動に違和感を覚えた。
「今年はサンタさんに何をお願いするの?」と、執拗に尋ねてくる。
サンタさんを信じていたわたしは、親に言わなくたって、欲しいものはサンタさんがくれると思っていた。
そんなわたしは、ひとりで賭けをした。
誰にも欲しいものを伝えず、心の中のサンタさんにだけ欲しいものを伝え、クリスマスを迎えてみた。
その年、初めて欲しいものが手に入らないクリスマスが訪れた。

◎          ◎

それからわたしは、親がサンタのフリをしているに違いない。と思うようになった。
そうだとしたら、親が執拗にサンタさんに頼むものを聞いてくるのも納得できる。
ひねくれていたわたしは、親に「サンタさんって、お母さんたちだよね?」なんて聞くことはせず、尻尾を掴むために奔走した。
翌年、クリスマスを迎えるにあたり、サンタさんへのお菓子と手紙を用意した。
これが、後日両親の手元から出てきたらクロ。
そう思ったが、うまくいかなかった。

両親が不在のときに家中探し回ったが、サンタさんへ送ったお菓子も手紙もどこにもない。
後から気付いたのだが、お菓子はあまり良くない選択だった。
なぜなら、食べてしまえば影も形もなくなるから。
子どもながらに、ちょっと頭の回転が足りていなかった。
手紙はものが残るから悪くない選択だったと思うけれど、ゴミ箱まで探しても見つけることができなかった。
今思うと、財布の中とかに入れて外に持ち出し、後日捨てていたのかもしれない。
当時のわたしは、親のカバンの中は見ても、財布の中までは確認しなかった。

◎          ◎

さて、計画が失敗したわたしは、さらに翌年、別の計画を決行する。
早め早めに、両親に欲しいものを伝え、それを家中くまなく探すのだ。
確か、ゲーム機の本体をお願いしたように思う。
ものすごく大きなものではないが、アクセサリーのように特別小さいものでもない。
これを、両親が不在のときに家中探し回った。が、見つからない。
クリスマスまでに両親不在の時間はずーっと探していたように思うけれど、ラッピングされたプレゼントも、ゲーム機も見つけることができなかった。
クリスマスは欲しいものがもらえる日だから大好きだったのに、この年はあまり嬉しくなかったのを覚えている。
何しろこんなに知恵を絞ってサンタのフリをしてる両親の尻尾を掴むつもりが、2年連続失敗したから。

そして、わたしの計画はついに成功することはなかった。
なぜなら、その翌年サンタさんは来なかったから。
事前に、両親から「サンタさんって実は私たちなんだよね~。だから来年からはプレゼントなしね!」とカミングアウトされてしまった。
サンタさんの……ではなく、両親の尻尾を捕まえ損ねたこと、それから今後プレゼントがもらえなくなることで、二重にショックだった。

◎          ◎

いまだにわたしはあのとき、わたしがサンタさんにあげたお菓子と手紙、プレゼントをどこに隠していたのか、想像することをやめられない。
一度、両親に聞いてみたら、「お菓子は食べた。手紙はせっかくもらったけど捨てた。隠し場所は忘れた」と言っていた。
手紙をどうやって捨てて、どこのプレゼントを隠していたのか、毎年思いを馳せる。