食事も仮眠もとって、映画も2本見た。
着陸まであと1時間。もう1本映画を見るには微妙だし、プレイリストをかけてみる。
ユーミンの「恋人がサンタクロース」では、背の高いサンタクロースが雪の降る街からやってきた、と歌っている。

そういえば、ほんの数年前まではそんなのに憧れていた。
いつか自分より背の高くて頼り甲斐のある彼氏ができて、クリスマスには私を迎えに来てくれる。リボンのかかった小箱開けて、キラキラした華奢なネックレスを私につけて、似合ってるよって。

そんな幻想を抱かなくなったのは、学部の研究室が決まってから。
研究室に籠っては終電で帰る日々。研究発表前に寝泊まりさえしていた頃、支えてくれたのは頼りないけど優しい後輩だった。
いつの間にか、彼の先輩から恋人になりたいと思って、私から告白した。運良く付き合えたものの、2年後に彼が進学したのはタイだった。
私は北海道に就職して、彼はタイで研究。コロナもあって会えるのは3年ぶりくらい。

ゲートで飛び跳ねながら喜ぶ彼を見つけて、思わずハグをした。私より小さい彼を抱きしめると、彼の癖毛が頬にあたってくすぐったい。
背が高くて、雪の街から来たって、私がサンタクロースじゃん。まあそれでもいっか。