駅で落ち合った時、彼が手ぶらなのを見て落胆していた。
ーークリスマスは料理を作るから、お花を買ってほしい。
一週間前、おねだりに慣れない私なりに、勇気を振り絞って言っていたのだ。
私の家に向かう途中、花屋の前を通りすぎた時、「あのお花かわいいね」と駄目押ししてみた。が、彼は聞き流すだけだった。

私は、リアクションをとるのが下手だ。
声が低くて単調で、表情にも動きがない。こんなことでは、彼氏だって「この人を喜ばせたい」とは到底思えないだろう。
好かれる人たちはいつも、オーラが明るい。打てば響くようなリアクションで場を華やげ、あざやかな表情で人を動かせる。宝石なんてつけなくても、本人そのものがキラキラして見えるのだ。
私ももう、それを「媚びている」と品評するほど馬鹿でも子供でもない。

その日はサバサバ振る舞いながらも、花を忘れた彼を内心かなり根に持っていた。どこまでも面倒なやつである。
翌日ひとりで花屋へ向かい、ミニブーケを買った。家に帰って花瓶に活けると、心にライトが灯ったみたいだ。根暗な自分でも、自分の力で自分を元気にさせることくらいならできそうだ。恋人に期待などしないのだ。