SNSと出会ったのは大学入学直後だった。

大学の同期や先輩とのコミュニケーションツールとしてSNSが使われており、会話の最後には「SNSやってる?」「アカウント教えて」と言われることも珍しくはなかった。
日常の何気ない一言をつぶやくTwitter、留学生と繋がりやすいFacebook、少しずつ人気が増してきたInstagram……。大学に入学してガラケーからスマホに変えるだけで一杯一杯だったが、馴染むために必要だとアプリをインストールしてアカウントを作成した。

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これまでいくつかのSNSを使ってきた。アカウントを作ってからの操作は簡単で、SNSを気にする時間が増えた。一方、承認欲求が出てきてしまった時期もあり、ネガティブ投稿やキラキラアピールをしたこともある。
今となってはほろ苦い経験だが、おかげで発信者としての意識を持つようになり、年齢を重ねるに連れて使い方を十分気を付けるようになった。
今も使っているSNSがあるが、いずれも鍵をかけており、一部の人しか私の投稿を見ることができない。基本的にドメスティックにSNSを使っている。鍵をかけていないアカウントも、勉強のモチベーション維持のために作った匿名のものだ。

SNSでのパブリックな発信に関わるようになったのは、つい最近のこと。
新しい職場である美術館での最初の仕事は、ホームページの編集・更新だった。私の部署ではホームページの一部を担当しており、編集方法を引き継いでもらいながら仕事に取り組んだ。一通り作業が終わり、上司に確認してもらった上、新しい記事を公開した。
そのすぐ後、先輩に新たな仕事を教わった。「ホームページの更新をSNSに投稿しましょう」と。

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この美術館ではSNSでの発信に力を入れており、誰でも知っている主要なSNSを運用している。イベントや企画の紹介をメインに、ほぼ毎日何かしらのSNSが更新されているのだ。
SNSへの投稿自体は難しいことではない。しかし、公式SNSの発信者として投稿することは初めて。私の投稿が美術館の投稿として公に晒される。過去のテンプレートをもとに文言を変えて、少し不安を感じながら投稿ボタンを押した。

帰宅後、仕事で投稿したSNSを覗いてみた。すると、自分のSNSでは見たことない数のいいねがあった。さらに、その半分くらいのシェア数が表示されている。コメントまである。
こんなにこの美術館に、この投稿に興味を持ってくれた人がいるのか。
自分が担当した記事と投稿を見てくれたことに嬉しさを感じる一方、発信者としての立場や責任を再確認した。

職場では当たり前のように、SNSの話題が仕事として扱われている。広報担当が職員に投稿内容の確認や修正を依頼したり、ツールを使ってSNSの管理や投稿予約、履歴の確認をしている。
上司が「今日はいつもより賑わっている」と言ったので、私はSNSを確認してみた。私の部署からと思わしき投稿のいいね数、シェア数がいつもより多かった。

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SNSをきっかけに来館してくれたり、ホームページを見てくれることは、職員としても、美術好きの私としても、とても嬉しい。仕事のモチベーションにもなる。
SNSは来館者と美術館の架け橋の役割を担っていると認識しているため、興味を引くようなコンテンツを提供したい。それと同時に、来館アンケートやお問合せなど、昔ながらの架け橋の在り方も考えている。
SNSを使わない来館者の存在を無視するべきではないし、利用者が美術館に対し意見を伝えることは勇気を要する行為だと思う。デジタルとアナログ、両方の架け橋を使い分け、美術発信に一助したい。

そんなこともあり、ホームページ編集やマーケティング、ブランディングなど勉強したいことが増えた。SNS上でのリテラシーも、公私関わらずより強く意識するようになった。
まだまだ学ぶことはたくさんある。学ぶことは楽しいものだ。
そして、学んだことを活かし、美術館職員の気持ちが来館者に届いてほしい。