前略
お元気ですか。貴方に謝りたいので一方的にごめんなさいと言わせていただきますが、許さなくてもいいです。許してもらえるとも思っておりません。
ただ、もし自分自身を責めているならばそれは違うことを分かっていただきたいです。
悪いのは身勝手な私ですので……。

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彼との1回目のデートでは、ジンギスカンを食べた。美味しいラム肉の専門店だったが、お酒も美味しく雰囲気も良かった。
初めてラム肉を食べさせてもらった。スーツの上からでも分かるほど、彼は体を鍛えていて、ボディメイクの知識を教えてもらったり、転勤前に数年間住んでいたという東京での話をしたりして過ごした。女性へのアプローチ方法が分からなかった彼は、経験豊富な東京の同期達に色々と教えてもらったのだとか。

正直、私はしっかり鍛えている人が苦手で、少し筋肉がある程度の男性がタイプだったが、笑うと目が極細になるところはまあ可愛らしいと思ったし、何より、悪い人じゃなさそう。
以前、好きだった女性に告白したら、二重の男性が好きだからという理由で振られたのだと話していた。
初対面で一重であることは分かるのに、何故、何度もデートをしたのだろう。他に、自分に悪いところがあったのではないかと結構傷ついたらしい。
私はそんなこと言わないよ、と伝えておいた。

1回目のデートから1ヶ月くらい経った頃に、2回目のデートをした。この日は、お寿司屋さんのランチを食べた。ランチの前に、シモンズへマットレスやその他寝具を買いに行った。
「一緒に住んだら、毎日このマットに寝れるんやで」と言われて、確かにそうだなぁと思った。店員さんへの態度も良くて、分からないことは格好つけて分かったふりをせず素直に口に出せる。素敵な人だ。おやつにクラシックな雰囲気の喫茶店で固めのプリンを食べて別れた。

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この頃の私には、実は気になっている人がいた。
そう、いたんです。ごめんなさい。
だけど、貴方の素敵さも分かっていたし心も痛かったから、決めかねていたんです。
しかも、貴方より何倍も悪い人です。

3回目のデートは、老舗の鰻屋さんで鰻重ランチを食べた。この日は、例の気になっている人の誕生日だった。1週間前に気になっている人から告白とその日のデートのお誘いがあったのだが、早い段階で彼とのデートが入っていたので、告白の返事は保留し、お誘いは断っていた。
今日、このデートで決めようと思った。そうは言っても私のなかでどちらを選ぶか、殆ど決まっていた。

ただ彼を選ばないという罪悪感を消し去るだけの決定打に欠けていたからこそ、彼とデートをしようと思った。
彼とのデート中、切り出すタイミングは一切無かった。
本当はちゃんとしたかったけれど、仕方がない。次のデートを断り続ければいいか……。

家で寛いでいると、彼からデートのお礼のLINEが来た。
いつも私のことを「ちゃん」付けして呼ぶ彼だったが、この時ふざけてなのか、何度か私のことを呼び捨てしていた。
私は付き合っていない男性に呼び捨てで呼ばれることが好きではない。チャンスだ。
「ちゃん、が無くなってるね」と打ったきり、私はその後の彼の謝罪LINEにも返信をしていない。

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ごめんなさい。
きっと貴方は名前を呼び捨てしたから振られたんだと思っていますよね。確かに、呼び捨てされることはあまり好きではないのですが、それだけで一気に冷めちゃう人間ではありません。
気になっている人のことを選ぶために、貴方を振る口実だったに過ぎないのです。
でも、他に気になる人がいるのだと正直に伝えれば良かったですよね。
同時進行していたなんて思われたくなくて、逆にトラウマになるような振り方をしてしまったかもしれません。ごめんなさい。
私は苦手ですが、急な呼び捨てにときめく女性もきっといらっしゃいます。距離感も一気に縮まりますし……。
それから、また自分に他にも悪いところが……なんてこともありませんからね。
「二兎を追う者は一兎をも得ず」と言いますが、あれは本当ですね。貴方をそうやって傷つけてまで選んだ彼には振り回されてしっかり振られました。ごめんなさい。
もうすぐクリスマスですね。どうか貴方のお隣に素敵な女性がいらっしゃいますように。
草々