高校1年生の夏、アルバイト先の5つ上の先輩に恋をした。一目惚れだった。

5つも下の女子高生なんか、相手にされないなんてわかっていた。それでも、どうしても彼の色んな表情を隣で見たいと思った。

一目惚れの彼と「初めて」一緒に行ったディズニーシーの思い出

初デートは、ディズニーシー。もちろん自分から誘った。ほとんど初対面の状態で行ったディズニーは、緊張と気まずさで頭が真っ白だった。自分から誘ったのだから何か話さなくちゃと必死に話題を探すが、なかなか見つからない。

彼は少しニコッとして「ピアス可愛いね」と褒めてくれた。ずるい。褒められたのはピアスなのに、まるで自分が可愛いと褒められたような気になってしまった。

これが、大人の余裕ってやつなのか。

絶叫系のアトラクションは、少しも怖くない。むしろ大好きだ。何回だって連続で乗れる。でも、これはデートだ。少しでも可愛いところを見せたい。そう思って少し怖がる振りをしてアトラクションが落ちる瞬間、彼の腕にしがみついてみた。

嫌がる素振りはされなかった。少しホッとした。嫌われてないかな、なんて不安になっていた。「楽しかったね」なんて言葉を交わしながら、ほかのアトラクションも次々と乗った。前半より、2人の距離も良い感じになってきた。

アトラクションの待ち時間は、お互い質問タイム。彼の好きな食べ物第1位と私の好きな食べ物第1位が、プリンだということでかなり盛り上がった。

帰り道、勇気を出して先輩に告白した。彼は「時間をくれ」と言った

帰りは、最寄りの駅から歩いて帰った。30分程歩いたところに私の家がある。歩いて家に着く頃には、日付を超えていた。

彼は心配して「タクシー乗る?」と聞いてくれたが、そんなことしたら、彼とさよならする時間が早く来てしまうと思い、どうしても嫌だった。まだ一緒にいたいなんて本音は言えず、別の理由を咄嗟に考えた。

私が「いや、歩きます。タクシー代もったいないです!」と言うと「迷惑じゃなければ家まで送るよ」と彼は私の手を引いた。手を繋いでしまった。心臓が飛び跳ねた。

帰り道も質問を交わしたり、失敗談を話したりしながらゆっくりと時間がすぎていた。この時間がずっと続いて欲しいなんて密かに思っていた。

「あの…先輩の彼女になりたいです…!」家に着いた瞬間、とっさに出てしまった。告白なんてするつもりなかったのに。彼も驚いた顔をしていた。「時間をくれ」と言われた。

それから1ヶ月しても返事はなく、振られたと思った。しかし、突然イルミネーションのお誘いが来た。あぁ、ここで正式に振られるんだなって思っていたが違った。

「お返事遅れてごめんね。僕でよければ、お願いします」と言われた。夢だと思った。まさかこんな幸せがあるなら、直ぐに同じくらいの大きさの不幸が来るんじゃないかと不安になった。

だが、それも違った。彼と過ごす日々は異常に緩やかで、お互いがお互いを尊敬しあって喧嘩なんか1度もしなかった。不満なんか1つもなかった。彼は優しかった。私の行きたい場所、食べたいもの、したいこと全て叶えてくれた。彼にもわがままを言って欲しかったが、彼は「そばにいてくれるだけで嬉しい」と言うだけだった。

付き合って2年ほどすぎたあたりから、お互いの環境が変わり始めた

彼とのお付き合いが2年を少しすぎたくらいから、お互いの環境が変わり始めた。彼は1人暮らしをはじめ、社会人2年目になりかなり忙しくなった。私は専門学校に通うことになり、会えなくなる日が増えた。お互い電話は苦手だったから、数える程しかしていない。寂しかった。会いたいなんて言えなかった。彼の状況を知ってたから。

会いたいなんて言ってくれなかった。彼は優しいから。私にわがままの1つも言わなかった。寂しいという感情しか湧き出ない日が続いた。

そして、ついにやってしまった。私は、彼と知り合う前から仲の良かった年上の人と2人きりで会った。これまでの彼との日々を一瞬で傷つけてしまった。純粋だった日々を汚してしまった。言わなきゃバレないような小さな浮気だったが、私は自分から伝えた。

当たり前になってしまったいつものデートの帰り道。バス停まで送ってもらっている途中「あなたはずっと私のことをまっすぐ愛してくれていたのに、私はそれに応えることが出来ずに更には裏切る行為をしてしまった。あなたがこのことを許すと言っても私が私を許すことが出来ないから、ここまでで終わりにしましょう。自分勝手でごめんなさい。今まで本当にありがとう」と言った。

彼は私の性格をよく知っていたから、引き止めることはしなかった。長いようで短かった3年間。彼は「充実した3年間をありがとう。いつでも応援してるから」と言って悲しそうに微笑んだ。

初めて見た彼の表情。最初で最後の表情。彼は、私に勿体ないくらい素敵な人で良い人だった。それだけだった。

私の純粋な36ヶ月の青春、きっと忘れることは出来ない。