私はいつまであの人との関係を続けることができるのだろうか。
SNSを通じて繋がることは思ったよりも簡単だけれど、その関係が切れてしまうのもきっと簡単なのだろう。ブロックしたりメールを拒否すれば、その関係はおしまい。とても呆気ない。
でもそれではあまりに悲しすぎるから、私はあの人との関係が終わらないことを心の奥で願っている。

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SNSを通じて話そうと提案したのは、あの人のほうだった。
「気軽に話せるからメールよりもいいんじゃない?」とあの人は言った。
私もそれに賛同した。だって、SNSで繋がればもっとあの人と話せると思ったし、遠くにいながらも身近にいると感じることができるから。

たくさん話せば、いつかあの人が私の気持ちに気づいてくれるのではないかと期待をしたこともある。
私の下心を知らずに、あの人は私をSNSのメンバーに追加した。でもそのことが逆効果だったことに気づくのに、そう時間はかからなかった。

SNSで気軽に話せると思い込んでしまうと、「もっと話したい」という欲まみれな自分がいることに気が付いた。
「あの人は忙しいんだから」とか「あの人の時間を奪ってはいけない」とか、いろいろなことを考えたけれど、どうしてももっと話したいと思ってしまう。

SNSですぐに話せる特権を得たものの、心の距離は前より遠のいたように感じた。
「私って意外と欲深いんだな」と自分を見つめなおすきっかけになったけれど、それでもやっぱり私はあの人と話がしたいのだ。

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思い切って通知を切ったり非表示にしてみたりしたけれど、あの人から返信が来るとその設定を解除してしまう。でもすぐには返信をせずに5分後、10分後といったように不自然に思われない程度の時間をおいて返信をするのが日課になった。

あの人が返信する時間の間隔が短くなればなるほど、私が返信を送る時間の間隔も次第に短くなっていった。しまいにはお互いに返信が来たらすぐに返す、ということを繰り返すようになった。
あの人と話す頻度が増えてとてもうれしいけれど、その裏で私は一人で不安になっていた。

私のこの状態は、ひょっとすると「依存」ではないか?
あの人は無理をして私とのやり取りに付き合ってくれているのではないか?
あの人の時間をこれ以上、奪ってしまっていいのだろうか……。

私はSNSを始める以前よりもさらにあの人のことを想いすぎて悩む時間が多くなった。
あの人は「大丈夫」とか「苦痛じゃないよ」と言ってくれるけれど、画面上の言葉では本音が探れない。だからもっと不安になる。その繰り返しだった。

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鬱陶しいと思われていないかな……嫌われないかな……とか頻繁に考えるようになったのは、恐らくSNSを通じて私とあの人を隔てていた壁が薄くなったからだろう。
メールの時は事務連絡のような硬い文章ばかり送りあっていたけれど、SNSだとタメ口に近い形で話すことが多くなった。向こうもそのことには気づいていたようで、「タメ口でもいいよ」と言ってくれた。

SNSを通じてわかるあの人との距離感。満足している面もあれば不安になる要素も多い。
私は一体どうしたらいいのだろう?

距離を置くことを考えたこともある。でもそんな時に限って彼からの通知がくる。
「今日はこんなにきれいな写真が撮れたんだよ」と他愛もない一通のメッセージ。
私はそれに対して「きれいだね。いい写真だね」と返す。そこからまた会話が始まる。

私は一体どうしたらいいのだろう?と、また考える日々が始まる。