マッチングアプリが出会いのツールとして一般的になった。5年前に友達がやっていると聞いた時は「個人情報が漏れたりしないか」「危ない目に合わないか」など不安が先行して、なかなか気が進まなかった記憶がある。

いざやってみれば、ある程度「この人は大丈夫そう」というのがメッセージのやりとりなどで判別できるようになったし、いわゆる変な人には幸いにも当たらなかった。それまでも、学校や職場などで関わった人は恋愛対象として見れなかった私にとって、「普通の生活をしていたら出会わなかった人」に気軽に会えてしまうマッチングアプリはとても楽しいものだった。

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周りの結婚報告などが多くなり、「自分はこのままで良いのだろうか」となった10月、恋人未満の関係を続けていた人と会うのをやめた。
初心に帰って、1番無難なアプリを再度使うことにした。そこでマッチした人に会いませんかと言われた。
沖縄出身の人。正直、紹介文で自分と共通のものがなさそうで、顔が生理的にNGではないというのを理由に会ってみることにした。

「新宿東口19時〜21時でいいですか」
このメッセージで不安になった。私は個人的に新宿をあまり好んでおらず、また東口と指定されることに違和感があった。なんなら終わりの時間まで書かれていて、「何かの勧誘とかされるのかな」と不安が広がった。

私が提案したお店を断ってきたら、勧誘だろうから会うのはやめよう、と思ったら、「そのお店で予約しました!」と連絡が来てホッとした。

当日はすごい雨が降っていた。お店の前に着くと、傘をさして立っている人がいた。写真通りの人だ。
予約の時間にならないとお店に入れないようで、それまで屋根があるところで待つことにした。自分の緊張をほぐす意味も兼ねて、たわいもない会話をした。

お店にようやく入店。居酒屋系のお店だ。
私が「これ、美味しいらしいですよ」と言って1つ選んだので、もう一品は選んでもらった。「サラダとかどうですか?」といいですね、と答えると、「じゃあ2個頼みましょうか」と言われた。1000円くらいするサラダ。きっと量も結構あるし、取り分けるという考えはなかったんだろうか。

「結構量あると思うので、1つで十分だと思いますよ、飲み物は何か頼みますか」というと、「あ〜水でいいかな」。
結果ワンドリンク制のお店だったので、注文することとなった。

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そこから休日は何しているのか、マッチングアプリはいつ頃始めたのか、恋人に求める条件はなどについて話した。
「結婚相手とかの年収ってやっぱり気になる?」と聞かれて、「自分と同じくらいかそれ以上であってほしいとは思っている」と答えた。子供も欲しいと思っているし、支えてもらう期間が生じると思っているからだ。

「うちって貧困層だったんだよね、年収200万以下」
「だけど大学までいけたし、なんとかなると思っている」
「両親はお金がなかったから喧嘩が絶えなかった」
「自分の事業をできるように準備している」
「海外に行ったことないけど、英語を話せるように海外に何年か住んでみたいと思っている」
「(パートナーに求める条件は)柔軟な人かな。海外に住むとかもいいね、ってついて来てくれる人がいい」

話が一貫していなくて、もやもやするのだろうか。いや、その全てを受け入れてほしいと相手に強要しているように感じることに、違和感を感じていたんだと気付いた。
結局自分のやりたいことを肯定してくれる都合のいい人を探しているだけなのだろう。その「なんとかなる」に私は少なくとも巻き込まれたくない。

マッチングアプリはいろんな環境の人が会う場所だ。でも、結婚で私が求めるのは「似たような価値観を持つ人」なんだと気付いた。
大海原のようなこの環境で、私の恋活は続く。