つい先日、Twitterで“推し疲れ”というワードがトレンドに入っていた。
「ファンはこうあるべき論」や「推している歴のマウント」など……。あらゆる疲れ方で“推し疲れ”をしている人が多いという。
数年ほど前、私と同じ推しを応援するファンの一部が迷惑行為を起こしたが故に、「○○くんのファンは変な奴しかいない」というレッテルを貼られてしまったことがあった。
推しのことは好きなのに、同じファンと思われたくないという“推し疲れ”から、「担降り(推しのファンであることを辞める決意)」をしたことがある。
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ちなみに今、私は別の理由で“推し疲れ”をしている。
原因は「推し」だ。
「推し」とは以前エッセイにも書いた「彦星くん」のこと(「休職した私の前に現れたスターの彼が、私を外へと突き動かした」)。
舞台俳優をメインに活動する「彦星くん」の観劇に毎月は行けないため、「彦星くん」の事務所が運営する有料ブログと週に1回放送されるラジオのレギュラー番組が、唯一彼の活躍や生存確認ができる媒体であった。
「彦星くん」を推し始めた頃は週に3〜4回はブログが更新されていた。それがある時を境に、「彦星くん」のブログの更新頻度が一気に減ったのだ。現在は月に4回はブログを更新してくれたらいい方で、月に2回しか更新されない月もあった。
小学4年生の頃に推していた俳優さんも、かつて月に1回更新していたブログが半年とか1年くらい全く更新されなくなったことがあった。
その後その俳優さんは有名なモデルさんと結婚した。
別に自分が推している俳優さんと結婚できるとかいう、“お花畑な妄想”をしていたわけではなく、「結婚=誰かの所有物になってしまって、さらに遠くに行ってしまう」という感覚に襲われ、小学生ながらショックだったのを覚えている。
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あの時と同じ予感がしてならない。
もちろん、「彦星くん」と結婚できるとかいう、“お花畑な妄想”をしていたわけではない。
あの頃のように「結婚=誰かの所有物になってしまって、さらに遠くに行ってしまう」予感がしてしまうと、「小学生の時のように、推している俳優さんの知りたくないあらゆる情報を、意図せず見聞きする機会が増えてしまうのではないか」という予期不安に駆られ、純粋な気持ちで「彦星くん」の演技や活躍を見ることができなくなってしまったのだ。
そう思った時、少しでも自分のショックを軽減するためにと心に決めたのが「担降り」。
私はこの秋、「彦星くん」から「担降り」することに決めた。
手始めに、今年の10月、観に行く舞台を「最後の観劇」と心に誓い、チケットを申し込んだ。
「彦星くん」を推してきて1年半ほど経ち、初めて最前列のチケットが当選したのだ。
「彦星くん」の端正な顔立ち、内側から輝かんばかりの美白の肌を目と鼻の先で見たのは初めて。劇中で幕ごとに年を重ねる主人公を丁寧に演じ分ける彼に涙した。美しかった。
そして来たる11月末、「彦星くん」の有料ブログを解約する。
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「彦星くん」の言葉で語られた、とても自由度の高かったブログ。「ボロネーゼを作った」だの、「最近寒くなってきた」だの。唯一、彼の近況をタイムリーに知れた媒体。
時たま、「私が出演するラジオを聞いてくれていたのではないか?SNSを見てくれていたのではないか?」なんて淡い幻想を抱いてしまうような、タイムリーすぎる話題がブログに幾度か書かれていた時は、表しきれない喜びで胸がいっぱいになったこともあった。
「彦星くん」をインスタグラムで見つけ、舞台に通い始めた私。
「ブログ更新の切れ目が縁の切れ目」とでも言おうか。
SNSが普及した時代だからこその「始まり」と「終わり」を感じる、秋の夜更けだ。