30歳を目前にしている今も、私は実家暮らしをしている。
いまや実家暮らしを続けていても、低賃金や介護などの社会問題もあり、なんだかんだと言ってくる人はそういない。
しかし私はここを出たい。早く出たい。
そう思いつつも、私はずっとここにいる。

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実家を出たい理由はいくつかある。
一番は"親が苦手"という理由だ。
公の場であるので、「反りが合わない」というオブラートに包んだ言葉だけ置いておく。
何も守るものもない私が何を気にしているのだろうか。
私は一人っ子だから、何かと羨ましがられることが多かった。
でも私は、お父さんがいなかったり、少し貧しかったりしても、楽しそうに日々を過ごしているみんなの方が羨ましかった。
虐待されていたわけではないが、精神的に辛いことが日常的にあった。きっと他人より弱い心が原因なんだろう。でもだからこそ、それをわかって欲しかった。
父は根本的にデリカシーがない。
母は自分の事でいっぱいいっぱい。
思春期の私はそんな二人に責められて、逃げ場がなかった。
思春期に限った話ではないが、そういう過去を根に持つ私。
塵も積もれば山となるように、二人への信頼は失せていった。
贅沢な悩みと捉えられてもしょうがない事は自覚している。

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ご近所さんが苦手なことも、ここを出たい理由。
これは母から吹き込まれた、一種の洗脳なのかもしれない。
「こんなことを言われた」だの、「あんなことしてた」だの。
もともと人見知りな私。そして天の邪鬼な私。小さいときからここに居るから、"大人な態度"に切り替えるタイミングを見失った。
実際、私の事を詮索してきたりするので、とても苦手意識があるのは事実。
ここを出て、それから逃れたい。

ここは戸建てなのだが、自慢できるような家ではない。
築50年近く経つボロ屋なのだ。
木造で、すきま風なんかざらである。
冬の時期、室内でもダウンを着ているくらい。
声も筒抜け。変な虫が床下から出てくることもある。
私は東京の23区内に住んでいる。
都会とは言えないが、自然豊かな街でもない。
虫が苦手な私には、地獄と言っても過言ではない。

それともうひとつ。とても恥ずかしい話だが、私は部屋を持っていない。
こんなにも一人時間が好きなのに、家の中で一人になれる空間がない。
居間の角にベッドを置いている。居間との仕切りはカーテンのみ。
それ故、聞きたくなかった話が寝起きの耳に入ってくることもしばしばあった。
"チリツモ"のひとつである。
こうしてエッセイを書くのも、読書をするのも、居間のテーブルで行わなくてはならない。
何か勉強するにしても、親の目線が気になって続かない。
最近はこんな態度の私に何か言ってくることは減ったが、学生時代は「お、勉強してるな~」などと言われることが至極嫌だった。先述の通り、私は天の邪鬼を拗らせている。そう言われるともう何もしたくなくなる。
私が勉強嫌いなのは、この環境のせいなのでは。本気でそう思っていたりもする。

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ここまで書いて気がついた。
私は逃げたがっている。

無い物ねだりは人間の性。
一人暮らしをしたらしたで、寂しいのかもしれない。
甘えなのかもしれない。
それでも私は、今の私の、そして昔の私の心を守りたい。
ここから逃げたい。

いい歳をしてまだ実家にいる理由。それはお金がないからだ。
フリーターでも一人暮らしをしている人はたくさんいる。
私がそれをできないのは、推し事にお金を使っているから。
推し事の魅力はたくさんあって、語っても語り尽くせない。
見たくない現実から逃げられる瞬間があることもまた魅力のひとつだ。
長期的な計画を立てるのが苦手な私には、今この瞬間を癒してくれる存在はとても大きい。

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女の折り返し地点と言われている年齢に近づいてきて思う。
「そろそろ長い目で自分の人生を見つめよう」と。

親は高齢と呼ばれる年齢になっている。
依然としてお金はない。
推し事もやめたくない。
言い訳はたくさん思い付く。
かがみよかがみに投稿できる年齢のうちに、自分の部屋を見つけようと思う。
思う、ではダメだ。
絶対に見つける。
私は結局依存しているのだ。
自立のために、一人になりたい。