毎日マスクをつけて出掛けて行き、マスクをつけたまま帰ってくる。それが当たり前となった。
マスクをつけていることは、息苦しさを除けば苦にならない。自分の顔に自信のある人は外したくてたまらないだろうが、そうではないので付けていることでちょっとした安心感を得るようにさえなった。

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大学生の頃、「人間の言動は果たしてどれくらいの意味を持つのだろう?」と考えた。容姿、声、雰囲気、それが大半を占めるのではないかとスマホで検索していた。
顔のパーツも大事だが配置もかなり重要だと思う。同じ配置でもずいぶんと変わってくる。
自分自身、不利なほうだと思う。

マスク生活の今、マスクを取る場面があると謎に恥ずかしく感じるようになった。特にコロナ禍以降に出会った人にはふとした時に見えてしまうのが気になる。以前、一時期、赤面恐怖症のような感じだったことも少しあり尚更だ。
マスクをつけるのが当たり前になると、リップをつけることもなくなった。「化粧をそんなにきちんとしなくても大丈夫なのでは?」と思うようになった。
自分のマスクをつけていない顔を見る時間はほぼなくなっていった。マスクは知らず知らずのうちに自分の顔になっていった。

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これまではマスクといえば白い長方形がオーソドックスだったが、コロナ禍になってから色々な形のマスクが店頭に販売されるようになった。
付けているマスクの形や色味で結構顔の印象が変わる気がしたし、そこを狙った商品が本当に増えた。

以前は色付きのマスクを付けるのはお洒落な人か個性的な人というイメージが強くて抵抗を感じていたけど、今はそんなことなくなった。マスクは一人一人の顔の下半分のようだ。他人を見て「マスクを取ったらどんな顔なんだろう」というよりも「きっとこの人は美人なんだろう」とかマスク込みで顔を想像するようになった。
自分が毎日マスクをつけることにより、日によって違うマスクをすると「このマスクのほうが顔のデカさが緩和されるなあー」という発見もある。

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ソーシャルディスタンスが推奨され、1人で過ごすことが当たり前になった。もし急に皆んなマスクを外して密になることを推奨されたら、私は結構違和感を感じる気がする。
集団で会食となると身構えてしまう気がする。
でも一方で、マスクをそろそろ外そうという動きもあり、早く外したい!早く前のような生活をしたいという人がいるのも事実だ。

こんなふうに感じている人は自分だけだろうか?とスマホで検索すると、そういう人が他にもたくさんいることが分かる。顔も名前も知らないし会話もしたことがない人たち。でも、他にもいるということが分かったことによって、自分だけがおかしいわけじゃないんだ!と安心することができる。テレビでもそういう人が増えているというのを見た。特に若年女性に多い気がする。

だけど、同じような人がいるからといって、その人達と会話をしたりしたいとか実際に会ってみたいとは思わない。そういう人がいるということが知れたらそれでいい。