私は23歳で、無職になった。
新卒で入った会社が、潰れかけで、ブラックで、モラルの「モ」の字もないような会社だった。
終電まで仕事があることもあって、しかも残業代は1円も出なくて。私は次の会社に行くために、そして自分の心と体を守るために、新卒1年目にして会社を辞めた。
会社を辞めると同時に、私の無職生活が始まった。バイトとかもしたかったけど、転職活動を優先するために、今は働かない選択をした。

私は実家を出たことがない。いつか一人暮らしをしてみたい気持ちはあるものの、実家が東京にあるから、すぐに出る理由が見つからなかった。
母と弟の、3人暮らし。父は、単身赴任している。
弟は大学生。
母は、寿退社をしているので、専業主婦をしながら、たまにバイトや派遣で働いている。母が働く時期は不定期だ。全然働かない時期もある。
家事は、ほとんど全部母がやってくれている。私はたまにお皿を洗ったり、お風呂を洗ったりするくらい。子どもの頃も、口うるさくお手伝いをしろと言われたことがなくって、それが良いのか悪いのか、私は家事に消極的な23歳女性に育ってしまった。

1社目でブラックに働いていた時は、帰宅は基本的に21時過ぎだった。
何時に帰るかもわからない、夜ご飯を家で食べるかすらわからない。そんな私のために母は、今日食べても、今日食べなくてもどちらでも大丈夫な種類と量のご飯を毎日作ってくれていた。
私はそれに甘えて、何時に帰るかも、ご飯がいるかどうかも、連絡せずにフラフラと家に帰っていた。

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無職になった私と交代するかのように、母は派遣で働き始めた。
その派遣先がかなりハードらしく、平日は毎日仕事で、遅い時は21時くらいまで残業していた。
母は料理を作れない状況になっていた。その代わりに私は料理を含めた家事全般をやるようになった。朝は洗濯物や洗い物をして、夜はお風呂を洗って、洗濯物を取り込んで、買い物をして、料理をして。

こんなにちゃんと家事をしたのは人生初めてだった。
でも、完璧に全ての家事をこなせた日は、無職の3ヶ月間で、多分、一度もない。家事の大変さを知った。きっと一人暮らしは大変なんだろうと思う。
同時に、3人分の家事をすることもまた、大変だと知った。3人分の洗濯物、お皿洗い、料理。

きっと一人分の3倍あって、3倍近く時間がかかる。
母親業って、こんなに大変なんだと痛感した。いや、実際の母親業はこんなものではないだろう。そう思うと、自分は親になれるのか不安な気持ちになってしまう。

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私は知らないことばかりだった。
家族全員分の洗濯物が、1回で終わらないこと。
いつ帰ってくるかわからない人の料理を作りながら待つ気持ち。
3人で暮らすと10Kgのお米がこんなに早いペースでなくなること。
家事をすべてやるのがこんなにも面倒くさくて、愛がないとできないということ。
全部全部、知らなかった。
知れて、よかった。

この時期に無職になって、母親というものを少しだけ疑似体験できて、よかった。
来月から私も新しい職場で働き始めるけど、少しは家事も頑張るね、お母さん。