特集:文章を書くということ

同じ手から出力する行動なのに。「描ける」のに「書けない」私の謎

文章を書くということ

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みなさんに苦手なことはあるだろうか。
裁縫、料理、洗濯……人によって苦手なものは人それぞれ、多種多様に存在する。
私はその中の「字を書く」という行為が、恐らく世界で1番苦手だ。

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私は発達障がいを持ちながら生きている。
その障がいの特性のひとつである「書字困難」……どうやらこれを強く持っていたらしく、それが影響して私にとっては「書く」という行為が幼い頃より苦痛で苦痛で仕方なかった。
国語のテストでの長文問題は、考える事はできるのに、文字として書き出すのが苦手だった。

一枚のイラストからお話を作るのは大得意なのに、書くという行為で出力するのがどうしても上手くできずに読めない文字となり、「ちゃんと書け」等散々な言われよう。小論文なんて、メモ用紙があっても制限時間付き。読める字で書くことすら出来ない有様だ。散々な学生時代を歩んできたため、書くという行為に対してすっかり自信がなくなってしまった。

ちなみに、私はイラストを描くことが趣味であり、得意分野の一つでもある。趣味としてのイラストは"描け"るのに、文字を"書く"ことが苦手。
どちらも同じ、手から出力する行動なのに、こうも差が出てしまうのはなんとも不思議な人種だと、最早笑えてきてしまう。

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そんな私も苦しみに苦しんだ学生時代を終え、何年か経って自分を客観的に見れるようになった。そのおかげなのかどうかは分からないが、「描けるのに、書けない」という長年の謎の正体が「脳の回転が早いのに手の出力が異常に遅く、スピードが噛み合っていないため」だとようやく判明した。

考えてみれば、過去に思いつきやメモ書きで書いてきた文字は、たとえ書けても自分ですら読めない字だった。書きとめないと忘れてしまう、でも頭の回転が早すぎて何を書けばいいかすら数秒で忘れてしまう。それ故に、思いついたらすぐ行動に起こさないとダメなのだ。私は昔から自分のそこに不快感や苛立ちが募っていたのだと思い至る事が出来た。

ただこう思い至ったのもついここ最近、ド近年の話である。だから、学生の頃は文章でのエッセイや自作の小説なんて絶対に書けやしないと思って意識的に避けていた。そう思っていたからこそ、今まで長文を書くものにチャレンジしようとすらしてこなかったし、面白そうだと思っていた文芸部にだって、入ろうともしていなかった。

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だが、スマートフォンやタブレット端末を手に入れてからその状況は一変した。いや、一変というよりも、世界そのものが変わったような感覚の方が近しい。
思いのままに、楽に文字を書いて消せる。思いの丈を思いつくままズラっと書き連ねた後にコピー、ペーストでとても楽に整理ができる。私の今まで思っていた事がすぐに文に出力して書きとめておく事ができる。しかもタップをするだけであれだけ書くのが苦手だった文字が書けてしまうのだ。スマートフォンやタブレット端末、パソコンを開発してくださった人に感謝しかない。

ただ、今度はこうしてスマートフォンなどでメモを取る事に関して、すぐに軋轢が生じてしまうこの社会が、私にとっての障害になっている。
よく、発達障がいを持つ人やその親の呟きを見かける事がある。
その中でも、書字や発語に対し障がいがある人は、多くの人がパソコンやスマートフォン等、私がとても助けを得られた端末を与えられると、驚くように沢山の気持ちや言葉を紡いでくれる事があるのだという。
外部からは見えにくい、精神面に障がいを持つ我々だって生きている人間だ。頭の中でも思うところなんて沢山ある。世間でよく言われる「健常者」として括られる人と違うのは、案外こうした出力方法なだけかもしれない。

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だが、結局のところ、「言葉を出す」という同じ行動だというのに、何故手から直に出力される文字や行動ばかりが尊ばれ、パソコンや端末で打った文字が忌避されたり馬鹿にされたりするのか。読めない文字しか書けず、今まで何をしても怒られてきた私には、残念ながら理解する事が出来ない。
デジタルでの出力が主流になった今だって、手書きの方が喜ばれるのは何故だろう。苦手があり、それを克服する術があっても拒否されてしまう。そんな世間が、障がいのある人ない人問わず、それぞれに合わせた配慮ができるようになるといい。
健常者と言われる人の中でも、視覚で処理をするのが得意な人や聴覚で処理をするのが得意な人など、特性とは言い切れなくとも必ず得意不得意は存在する。それは障がいのある人だって、少し配慮の仕方は違えど、同じ事だ。

どんな小さな事からでも構わない。デジタルで処理をする等、今は忌避されがちな行動がいつか普通……当たり前となり、誰彼に嫌な目を向けられる事もなく、対等に生きられる時代に変えていければ。私たちがその一歩を担えれば良いと願っている。

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