私にとって文章を書くということは、自分の気持ちを表現することです。
私は、自分の気持ちを素直に言葉にすることが得意ではありません。母には、何度も「言葉にしないと伝わらないよ」と言われてきました。
そんな私は、幼い頃から手紙を書くことが好きでした。うまく言葉にできない気持ちを表現することができる手段になるからです。

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幼稚園に通っていたとき、毎日のように先生へ手紙を書いていました。先生からの返事は、いつも動物やキャラクターの形をした手づくりのメッセージカードに書かれていました。そのカードを貰えることが嬉しくて、お気に入りのお菓子の空き缶に宝物のように大切にしまっていました。

小学生になり、友達と手紙を交換し合うようになりました。可愛いキャラクターのレターセットやメモ、シールなどを集めて楽しんでいました。また、担任の先生やクラスメイトに年賀状を送ることもありました。

中学生では、部活動の大会の日の朝にメンバー全員で手紙を交換するという伝統がありました。しかし、高校生からは学校で携帯電話の使用が許可されていました。自分のスマートフォンを持つようになり、LINEやメールで簡単に連絡が可能になりました。

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その頃から、友達に手紙を書くことも少なくなっていきました。我が家では年賀状を出すこともなくなりました。
今でも、家族や友達の誕生日など、記念日にメッセージカードを送ることはあります。しかし、自然と文章を書く機会が減ったように感じていました。

昨年、私は体調を崩し、急遽入院することになりました。現在は、新型コロナウイルスの感染対策のため、入院中に家族や友人と面会することが禁止されています。家族がお見舞いに来てくれても、直接会うことが許されませんでした。そのため、私は看護師さんを介して母へ手紙を渡すようになりました。母もお見舞いに来てくれるたびに、手紙を届けてくれるようになりました。

最初は、母に日々の生活や回復の状況を知らせるために書いていました。しかし、「大丈夫だよ」「心配しないで」といった言葉ばかり並べて、なかなか素直な気持ちを書くことができずにいました。

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私は入院中も、一人で不安なこと、治療が辛いこと、さまざまな気持ちを表現することから逃げていたのです。一人の看護師さんが「正直な気持ちを隠しているほうが家族は心配するよ」と教えてくれました。それから私は、毎日、日記をつけることにしました。

最初は、自分の気持ちと向き合い、涙を流してしまう日もありました。しかし、心の中に溜まっていた言葉を文章にすることで、頭の中が整理され、自分自身の本当の気持ちを知ることができるようになったと思います。そして、母への手紙の中でも、以前より素直な気持ちを文章にできるようになりました。

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誰かに自分の弱いところを見せることは、辛く感じることもあります。しかし、会えないからこそ伝えたい気持ちが言葉になって溢れてきました。

母から「気持ちを伝えてくれて嬉しかった。ありがとう」という手紙を貰ったときは安心しました。退院時には、お世話になった病棟の先生や看護師さん、作業療法士さんに手紙を送りました。言葉では伝えきれない感謝の気持ちを手紙にしました。

私は、コロナ禍での入院を通して、自分の心と向き合う方法を見つけました。私にとって文章を書くということは、自分の気持ちを表現することです。
昔も今もこれからも、ずっと変わらず大切にしていきたいことです。