人を頼る方法を、私はずっと知らなかった。誰かに助けて欲しかったけど、助けを求めることなんてできなかった。

完璧にこなそうと必死だった。しかし突然、入院生活が始まった

大学1年の冬、突然の入院生活が始まった。体の色んなところに不調が出ていた。
主な原因は、ストレス。ストレスを感じるほどの苦労はしていないし、私なんかがストレスなんて言ってはいけないと思っていたし、本当に自分は弱いなと今でも思う。
でも、あの時はそれまで抱えてきた色んなものも一気に爆発してしまったのだろう。

大学に入学して1年間、色んなことに挑戦した。そして、どれも完璧にこなそうと、必死だった。もう、誰にも見放されたくない。周りの人に認めてもらうためには、いつも完璧でいるしかないと思っていた。

心のどこかにはいつも、父と母に、私を産んで良かったと思ってもらいたいという想いもあった。「あの子を産んだ時からが間違いだった」という言葉を度々口にしていた2人に。
遂に、心も体も限界を迎えてしまった。人生で初めての長期入院。

多くの場合、家族に一番に報告し、病院に来てもらうのだと思うけど、私はそれがどうしてもできなかった。心配をかけたくないというより、心配されたくなかった。「やっぱりダメな人間だ」と思われるのではないかと、怖い気持ちもあった。
とはいえ、当時未成年だったため、家族に秘密にしておくということは不可能。

結局私はダメな人間だ。そんな時に連絡をくれたのは母校の先生だった

入院生活が数日経過し、やっと、父親に電話をした。何を言われたかは覚えていないけど、思っていた通り、優しい言葉は一切なかった。公衆電話から病室に戻る帰り道、歩くこともできなくなるほど、恐怖と不安で全身の力が抜けてしまっていた。
父に怒られることが怖かった。怒鳴り声を思い出すたび、恐怖に襲われた。
もう終わりだと思った。父に結局ダメな人間だと思われる、過去の色々な恐怖が蘇った。

とにかく苦しくて怖くて、誰かに助けて欲しかった。でも、自分から人を頼ったことなんて、ほとんどなかった私は、誰になんと言えばいいかわからなかった。

父にしたのは、あくまで報告。父も母も、幼い頃から私を傷つけ続けた。そんな両親は、私にとって頼れる存在ではなかった。
「いつでも頼ってね」と言ってくれた人たちも、きっと今更頼られても迷惑だろうな、そんなことを考えているうちにまた数日が過ぎた。

そんな時、1人の母校の先生から偶然連絡があった。そして、電話で話したいとお願いをした。電話をし、それまで口にできなかった不安を、気づいたら話していた。
「今すぐに病院に行きたい……」
病院まで4時間以上かかるのに、それでも、お見舞いに来ようとしてくれる人がいるということが、本当に嬉しかった。
その後も何度も連絡をくれ、励ましてくれた。
助けて欲しい時、助けてくれる人は本当にいるんだと思った。

入院生活で気付いた大切なこと。支えてくれた人たちにいつか恩返しを

病院にいた約1ヶ月半、思い返すと私は沢山の人に助けてもらった。
定期的に部屋に来て雑談をしてくれた看護師さん、お見舞いのお菓子や果物を分けてくれた同室の患者さん、サプライズで励ましに来てくれた大学の同級生、一緒に泣いてくれたサークルの同期、暇つぶしにと何度も遊びに来てくれた先輩、連絡をくれた人たち。

私は1人じゃなかった。
助けを求めれば、助けてくれる人が沢山いる。
強がらず、苦しい時は苦しいと言っていいんだ。
誰も、それを迷惑なんて思わない。

そんな大切なことに気づけた。だから、私の入院生活は意味のあるものだったに違いない。
あれだけ苦しかった時に励まし、支えてくれた人たちに、恩返しをしたい。そして私も、見えにくいSOSにも手を差し伸べられる人間でありたい。