大学3年生になり、就職活動が始まった。
初めて書くエントリーシート。「学生時代頑張ったこと」「あなたの強み」など自分の今までの経験から得られたものをいかに上手に伝えられるかが重要になってくる。また、企業によっては「あなたが1番輝いているときは?」「好きなブランドを挙げて、その魅力を教えて」などユニークな質問も珍しくない。
正直、留学もサークルもボランティアもしたことがない私には、人と差をつけられるようなものなど持っていないと思っていた。「自己PRはPREP法を意識して」、「ガクチカには力を入れようと思ったきっかけを必ず書く」など様々なことを教わった。エントリーシートの書き方だけマスターし、肝心な内容はなかなか決まらなかった。
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とりあえず今まで自分はどのような人生を送り、何に取り組んできたのかを思い出してみる。振り返ると、気持ちが不安定になっているときや高校生から大学生になり環境がガラッと変わるときに支えてくれたのは家族からの言葉だった。
大学受験の時期、友人が続々合格報告をしていくなか、私は受験した大学に落ち続けていた。18年間地方の田舎で暮らしていた私は、大学で東京に上京したいとずっと思っていた。しかし、散々な結果から、やはり東京の大学に進学することは諦めた方がいいのかもしれない、もっと目標を下げて行けるところに行った方がいいのかとモチベーションが下がっていた。
そんな時に東京に出張に行っていた母から「受けたいとこ受けなさい。やっぱ東京はいいよ。」とLINEが来た。たった二文、それでもそこに母の私に対する思いが込められていた。出張先でも私のことを考えてくれていたのかと思うと、今ここでうじうじ落ち込んでいる暇はないと気持ちを切り替えることができた。
そこからとりあえず目の前の課題に取り組むことを意識した。最終的に後期日程でダメ元で出願した大学に合格することができた。
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晴れて東京の大学生になれた私は、コロナ禍で2年間ほぼオンライン授業だったが、上京して毎日新鮮な気持ちで過ごしていた。大学3年の初めには1年生の頃と比べ徐々にGPAの数値も上がっていたこともあり、大学から給付型奨学金を受給できるようになった。
ある日、祖母から食料が入った段ボールが届いた。食料と一緒に一つの封筒が入っていた。
そこには「奨学金凄いねおじいちゃんも喜んでたよ。少しだけど好きなもの買ってね。」と書いてあった。いつもお小遣いを祖父に内緒でこっそり私にくれるように、段ボールにもこっそり入れてくれたのだろう。
普段の連絡手段といえばLINEのようなSNSであるため、久しぶりに見る手書きのメッセージ。祖母のクセのある達筆な字を見たとき、祖母が食料を詰める光景や封筒に文字を書く姿が浮かび、なぜか泣きそうになった。私は1人ではないし、いつでも帰ってくる場所はあるとそう思えた。
「今度帰省するときは祖父母が喜びそうなお土産を買って帰ろう、そして祖母の料理を家族みんなで囲んで食べたい」
そんなことを考えていた。
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就活は今のところ自分が想像していたより辛いものではない。逆に今までの自分の人生を振り返ることができるいい機会でもある。
確かに面接直前は緊張もするし、逃げたくもなる。しかしいざ面接となると、会話を楽しんでいる自分もいる。お祈りメールが来たときには「ご自愛ください」の言葉だけを真摯に受け取るようにしている。
実際、エントリーシートを色々な企業に提出するようになった今でもエントリーシートの書き方の正解は分からない。でも、たった一言二言で私の気持ちが晴れたように、自分の言葉で読む人の感情が少しでも動くそんなエントリーシートにしたい。
文章を書くということはそういうことなのかもしれない。