「自分の脚で立ちたい」。常に抱える焦燥感を一言で言い表すなら、そうなるんだと思う。
何を以て「自分の脚で立っている」状態なのか、何になりたいのか、欲しいものは何か。それがどんな状態なのかと聞かれても、上手く伝わるかわからないけれど、ここしばらくの私は常に「自分の脚で立ちたい」と思っている。

体調を崩して辞めた前職を経て、今の職場にパートとしてお世話になり始めて2年が経った先日、私は課長に呼びだされて第1応接室にいた。ここにお世話になることになる直前、採用のための面接で訪れた場所も、今思えばこの第1応接室だったんだと思う。
少し薄暗いこの部屋は、とある11階のビルの中にある。だけどその時とは違って、今回交わした会話は雇用契約を更新するかどうかということ。次の1年も、またここで働く意志があるか。
結論から言うと、契約の更新はせず、私は今年の夏でこの職場を辞めることにした。

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ここを辞めてどこに行くのか、次の仕事は何か。何も決まっていない状態だから、無計画以外の何物でもないんだけれど、人生を衝動的に、刹那的に生きるきらいがあるというかそう生きるしかしてこなかった私だから、この選択は不思議でもなんでもなかったんだろう。

ただ、自分一人養えるくらいの収入が欲しい。知らない土地でも自分の力で生きていけるのだとやってみせたい。泣いてしまう日があっても、なんとか自分で自分を励まして明日を見据える強さが欲しい。私の言う「自分の脚で立ちたい」はだいたいこの辺りに集約されている。

それが叶わない今の生活をなんとかしようと決めたのは、大学時代の友人の漏れ聞こえてくる近況だとか、大切な趣味があるからだとか、いろんな要因があるけれど、私は私を幸せにするためにここを辞めるし、自分の脚で立つ選択をしたい。そうして、少しだけでいいから自分に自信を持って生きていきたい。

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「自分の脚で立つ」ために、昨年夏から転職活動をしている。かれこれ半年以上は求人サイトを眺める生活が続いていて、仕事から帰ったら応募企業からのメールを確認したり、履歴書や職務経歴書を書いたりしている。
なかなか採用が決まらないのは、経験不足と早期離職、面接での口下手と事故物件すぎる私がいけないんだと思う。喋るのが下手で、思っていることがこれだけあって、どんなに書くことが好きなんだとしても、肝心な面接で自分を口頭パフォーマンスできないのなら社会人としては失格なんだと痛感する。

いつかの私がこのエッセイを読んだとき、遥か遠い惑星での出来事のようだと思えるようになっていればいいなと思う。今はどんなに自分が嫌いでも、1ヶ月後の自分が何をしているのかさえわからなくても、いつか大丈夫になるのだと無条件に信じて、できることからやっていくしかないのだろう。
負けたくない、遅い夕ご飯を食べながらそう思った私はまだ大丈夫だ。
ご飯の味付けは、いつもより少しだけしょっぱかった。