「あけましておめでとうございます!」
2022年から2023年へと年が変わった。その場にいた大学の同期たちと挨拶を交わし合う。誰かと過ごす年越しは久しぶりだった。
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学生時代の私は年末年始という、日本人にとって大切なイベントを蔑ろにしがちだった。課題や研究があるからと学業を優先したり、時給が上がるからとバイトのシフトで埋めたりと、年末年始ならではの心の安寧よりも、コスパの良さを優先していたのだ。
社会人になった2021年。バイトも学業もする必要がなくなり、どんな年末年始を過ごそうかと心踊らせていた。しかし、職場での過剰なストレスにより、年末年始どころか、クリスマスの時期から身体が動かなくなってしまった。1月に入り休職してしまい、虚しい気持ちで2022年を迎えてしまった。幸いなことに、転職して以前よりは穏やかな生活を送れるようになったが、「今回は平和に年を越せるだろうか」と年末が近づくにつれてソワソワしていた。
そんな中、大学時代の同期から連絡がきた。
「同期で集まって、年越ししませんか?」
私は嬉しくて飛び跳ねそうだった。「忙しそうだから誘いにくい」と言われてばかりの私が、大学の同期と年越しというキラキラしたイベントに誘われたのだ!高まる気持ちを抑えつつ、少し時間を置いて「参加します」と返事した。
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大晦日。前日まで地元に帰省していた私はお土産を片手に、年越しの第一会場である同期の家に向かった。参加する同期はほぼ揃っており、調理する人もいれば、ソファでダラダラする人もいる。こんなに和やかな年末の光景は久しぶりだった。テレビを観て、同期の手料理や各々が持参したお土産を食べ、年越し蕎麦をすすりながら新年を迎えた。
年越しの第二会場は湖畔に建つ展望台。元日の日の出に合わせて、特別にデッキが開放されるとのことだ。同期の車に乗せてもらい、展望台へ向かった。湖周辺は田畑と住宅が広がる、のんびりした地域だった。到着し、展望台のデッキに向かった。
夜明け前の外はとても寒い。いつもなら寝ているか、起きていても部屋の中にいる時間だから、夜明け前の空気の冷たさを改めて認識した。厚着しているのに、ホッカイロを二個持っているのに、寒さを通り越して痛みを感じた。それでも、冷えた空気を心地よく感じるのはなぜだろう。
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ここに来て、気がついた。私、初日の出を見るの初めてだ。寒さや痛さよりワクワクする気持ちが勝り、明るくなってきた東の方向をずっと見つめた。
日の出の時刻。火をつけたばかりの線香花火のような、赤みを帯びたオレンジの光が山々の間から現れた。光は静かに昇っていき、山脈を侵食していった。
私は心を奪われた。今まで色々な景色を見てきたが、経験したことのないパワーと希望を感じる。光は次第にオレンジから彩度が高くなり、ベールをまとった綺麗な円が昇っていく。綺麗な景色を見たと同時に、自然を感じた時間だった。
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前回の年末年始はつらかった。つらかったことは時間が経っても、決してちっぽけなことにはならない。けれど、何とか乗り越えることができた。わだかまりを感じやすい私は、嫌な出来事もネチネチ思い出してしまうこともあるけど、美しい自然や景色を見ている間はネガティブな感情もどこかに忘れてしまう。そんな景色と新年を迎えることができた。
2023年の目標の一つに「旅をする」と掲げた。私の旅先ウィッシュリストは、自然を感じる場所で埋め尽くされそうだ。気が早いが、今年も平和に年を越せますように。そのための活力を受け取りに、軽やかに旅をしよう。
そして、年越しに誘ってくれた同期たち、ありがとう。