ずぼっ
ずぼぼぼぼぼっ
新年早々雪に埋もれる、そんな年ある?
雪に埋もれて一番に思った年明けだった。

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遡ること去年の元旦。
前日、大晦日の夜には地元加須にいたはずだったのに、ぼーっとしているうちに気がついたら年明けの朝方、初日の出が顔をのぞかせる前に私が大好きな地、岩手は遠野のおばあちゃんちに着いていた。

遠野は山の中にある街だから、毎シーズンの冬場は雪がどれくらい降るかほんとうにわからない中帰省し、年末年始を過ごすのが我が家のスタイルだ。
昨年は比較的大雪の年であったけれど、車から降りたときには一面雪景色だったおばあちゃんちの周辺一帯。埼玉から岩手まで、交代しながらとはいえども夜通し運転してくれてお疲れだった父親と妹の旦那さんの代わりに私が任されたのは「初日の出の撮影」。家族の中では父親の次くらいにカメラが趣味な私は、その任務を遂行するべく、自分が行ける範囲を新雪も積もっているというのにも関わらず、スマホ片手に加須で愛用しているスニーカーでいい撮影場所を探しに散策し始めた。

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加須では風の寒さが私の頬を刺すが、遠野は雪の寒さが私の頬を刺す、そんな中で私が知っているおばあちゃんちの近くで「ここならきれいに撮れるかな?もう少し親戚の家寄りか上攻めたほうが綺麗に撮れるかな?」と、探り探り歩き始めたときのことだった。
撮影場所を探そうにも、目の前には親戚の家や電線など、初日の出を撮りたくてもちょっと邪魔だなと感じるところがとても多かったので、おばあちゃんちのすぐ近くを通る汽車の線路が敷かれている、少し丘のようになっているところまで登ろうとした。そのときだった。

ずぼっ
ずぼぼぼぼぼっ

新年早々雪に足を奪われ、小さな丘の坂道で雪に埋もれてしまった。
坂道のすぐ近くには猿ヶ石川につながる小さい川が流れている。無事だったけれど、一歩間違えたらその川にまで、スマホを持つ手とともに足が極寒の水に浸るところだった。

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「なーして新年早々雪に埋もれてっかな、アラサーの私よ……」
ただでさえ身長が小さくて雪に埋もれたら最後、抜け出すのに時間がかかるというのは小さいときの経験でわかっているというのに、その失敗を15年ぶりくらいにまた繰り返してしまった。
幼少期を含めると遠野で過ごした年末年始は数知れず。ときには大寒波に見舞われ、大雪の中過ごした年末年始も経験しているというのに、久しぶりにすっぽり雪に埋もれるのではないのかと頭をよぎったくらい、足元は完全に埋もれてしまった私。

初日の出はどんどん高くなってゆく。でも心の中は2022年の始まりを告げる朝日と反比例して、現実の私みたいに雪の中に埋もれていく一方だった。
とは言ってもまだ初日の出の撮影は終わっていない。気持ちを切り替えてすぐにおばあちゃんちに戻れる範囲内で朝日が綺麗に撮れる場所を探しに出かけた。

結果的に足元は雪に埋もれたまま、おばあちゃんち脇の小道を親戚宅付近までちょっと歩いて、自分のできるベストショットを収めることはできたけれど、もう二度と普段使いのスニーカーで雪道を歩くもんか、なんなら新雪積もってるなかで丘を登るもんかと心に誓ったのは言うまでもなく。
今シーズンの年末年始では雪はそこまで降っていなかったものの、路面凍結している場所があったので、昨年の反省を生かして安全靴で常に移動していた自分がいたのはここだけの話。