特集:素顔の私

救われたけど、マスクが嫌い。素顔の自信をなくし、作り笑いで困る

素顔の私

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私は基本、マスクが嫌いだった。
インフルエンザが流行っていても、花粉の季節になっても、ウィルスガードのスプレーのみでしのいで、花粉症の症状がひどい時だけマスクをつけていた。
何が何でもしたくなかった。マスクをつけたくない理由は、メガネが曇るのと、マスクの内側が水蒸気で濡れるのが嫌だったからだ。

しかし、新型コロナウィルスが流行りだしてからマスク着用がほぼ義務の世の中になってしまい、嫌いなマスクを付けざるを得なくなった。それからは、人と会うときにかなり違和感を覚えた。
相手に顔をマスクで隠されてしまうと、自分も同じことをしているのに何だか虚しい気持ちになった。それは、表情が見えないと相手の感情を感じ取るのが大変だし伝わりにくいからだ。さらに、相手は私がウイルスを持っていると思っているんだ……と思うと、話の内容とは打って変わって疑われている気持ちになり、モヤモヤとしてしまう。やっぱりマスクは取りたい。

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やがて世の中は「Withコロナ」の世界になり、マスクをつけることが定着して当たり前になった。むしろ、マスクをしていない人を見ると違和感を覚えるほどである。
おかしな話だ。まるでマスクも顔の一部になってしまったかのようだ。
マスクが嫌いだった私も、文句を言わずに毎日のようにマスクをつけて生活している。マスクをつけているのを忘れて食べ物や飲み物を口に運びそうになってしまったり、逆にマスクが無いと何かで隠したくなったりすることもある。何かと毛嫌いしていたマスクだが、いつのまにか「無くてはならない物」になっている。

マスクがあることでむしろ助かることもあった。
コロナ禍前から、メイクをする女性にとってはすっぴん隠しに使われるが、私もよく使うようになった。眉毛さえ書いてあればいいやと思って、口紅やチークを使う機会がめっきり減った。
ただ、眉毛だけが書いてある状態で食事をするとなると一気に不安になる。マスクで隠されている部分はすっぴんであることに気付いて、下を向きながらごはんを食べる。いつのまにか自分の素顔に自信がなくなってしまっていた。

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そして、マスクは人との会話の中でこんな場面においても重宝した。
笑ってはいけない場面で笑いをこらえているとき。
相手の発言にイラッとしたとき口の周りにシワができるとき。
相手の面白くない話にリアクションしなければいけないとき。
など、相手に自分の素の反応を見られたくない時に役に立った。マスクで隠れていなければ相手が自分の表情から思っていることを読み取ってしまい、あわよくば人間関係に支障が出るところである。話が面白くなくても、目だけ笑っていればいいのである。

マスクを極力したがらなかった女が、思ったよりマスクに救われている。しかし、いざマスクを外したときに困ってしまうことも増えた。
マスクをしていたら笑わなくてもいいところでは目だけが笑っているが、マスクを外している時にマスクをした気になって同じような表情をしてしまうとまずい。つまり、作り笑いを忘れてしまっていると自覚する瞬間が度々訪れるのだ。
マスクをすることに慣れて表情を作る機会が減ると表情筋が使われなくなってしまい、とっさに表情を作ろうとするとぎこちなくなってしまう。マスクを外した時に表情が作れているかどうか後から不安になる。

顔の表情はノンバーバルコミュニケーションであり、言葉でコミュニケーションをとるときには重要な要素となる。マスク社会は人の表情による表現の豊かさを奪ってしまったとも言えよう。

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だからこそ、マスクがあっても無くても相手と会話をする際には表情を作る意識をもつことが必要なんだと思う。きちんと笑っていれば、マスクの下は無表情で目だけで笑っている時よりも自然な笑顔が伝わると思う。将来的にマスクを外す世の中が再びやって来るかもしれない。その時に備えてこれからはマスクの下でも表情を作って人とコミュニケーションを取りたいと思う。

マスクに救われたこともあった私だが、やはりマスクはできればしたくない派である。

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