「長期インターンというものはですね、半年以上が基本で、その間に学生の成長を促す目的で行われるものなんです」
知ってるよ、そのくらい。知ってるから数か月でもできるインターン先をダメ元で探して、今こうしてオンライン面接をしているんじゃないか。
「弊社としてもそもそも春休みの2ヶ月だけで終了するプログラムは用意していないので……」
採用ページに「最短1か月でも可」と書いたのは誰だ。

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人生の夏休みと言われる大学生。薬学部の私は夏休みと言えるほどは暇ではない毎日だが、人生の春休みと言えるくらいには自由な時間がある。
そして現在は文字通り春休み中である。

休みが2ヶ月あると知ってから、私は何か有意義なことがしたいと思っていた。運転免許は取るつもりがない。塾や家庭教師のバイトは増やすにも限度がある。実家に帰ってやりたいこともない。旅をするのも良いと思ったけれど2ヶ月は予算的に持て余す。結果、インターンシップが自分の成長も貯金もできる有意義な春休みの過ごし方だと考えた。

しかし、案の定2ヶ月だけで雇ってくれるところなんてなかなか見つからない。たまに見つかっても業種や理念、勤務形態がどうしても納得できなくてやめた。

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そんな時、登録していたインターンシップサイトから1社がスカウトのメールが来た。如何にも自動送信ですといった文面に、猜疑心がなかったわけでもなかったが、とりあえずインターンの面接とはどういうものか知りたいという気持ちもあった。

19時からオンライン面接。時間が近づいたらビデオを繋ぐURLを送ると言っていたのに18:56になってもまだ来ない。もう19時になるという頃になってやっと新着メール。
「申し訳ありませんが19:30からに変更できないでしょうか。」

待った。猜疑心に拍車がかかったけれど、待った。面接するにも手間と時間はかかる。適当に面接していくだけなのは生産性が悪いはずだから、相手方も何も考えていないわけではないだろうと。

やっとつなげた画面。能面に張り付けたような笑顔。AIみたく流れるような自己紹介。それらを終えて本題に入ってすぐ、言われたのが冒頭の言葉だった。
能面でもAIでもなかった。ちゃんと人間だったからこそ不快だった。

あなたが言うから待ったのに。あなた方がスカウトしたのに。
私は2ヶ月程度のインターン希望と登録していた。
自分達がいい加減なことを採用ページに書くから私のもそうだと思ったのか。いや、ただの数うちゃ当たる精神だ。私はたかが膨大な数の一つに過ぎない。
別にその企業が特別悪いわけではないのだろう。

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でも、やっぱり面接で話をして、私には合わないと思った。
向こうもそれは同じだろうけど、もしも、採用されたらその場で断ろう。
後日、メールが来た。「残念ながら今回は不採用と……」こうなるのは分かっていた。どうせ私も働きたいとは思えない企業だった。こちらから断る手間が省けた。

なのに、胸が痛かった。必要とされていないということが悲しかった。私は、自分が好ましく思わない人からも拒絶されることにさえ、こんなに打たれ弱いのか。
働くということはこんなにも疑いと嫌悪と余所余所しさに溢れていて、人間味のないことなのか。それでいて時々見せる人間らしさ、その人の素の感情にこんなにも傷つけられるものなのだろうか。

分からない。でもインターンをしたいという気持ちは変わらない。それら全て含めて働くことなのならば、どうせいつか大人にならなければいけないのならば、いつまでも子どもでいたいと背中を向けるより、予習をして、対策をしていたい。あわよくば、働くって、仕事ってそんなに悪いことじゃないんだと思える部分を見つけたい。

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その後、別の企業にインターンとして採用された。自分に無理のない範囲の仕事ができ、半年以上でも学業と両立させられそうな企業。インターン生にも実力に応じてきちんと評価を与え、仕事を任せてくれる、私がここで働きたいと思える企業だ。今のところは。

これからこの企業は私にどんな裏を見せてくれるだろう。楽しみとは違う、暗い好奇心と危ない闘争心が火を灯した。